弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2015年12月 9日

遺骨

日本史(戦前)

(霧山昴)
著者  栗原俊雄 、 出版  岩波新書

  アベ首相とその取り巻き連中は靖国神社の参拝には執着していますが、遠く異国の地で埋もれてしまったままの旧日本軍の将兵の遺骨の回収には冷淡そのものです。
  それこそ自己責任理論を持ち出すのでしょうか・・・。許せません。
  そして、東京大空襲を仕掛けたアメリカ空軍の責任者に対して、なんとなんと勲一等というとんでもない勲章をうやうやしく授与したものです。大虐殺された被害者側が加害者の親玉に感謝の勲章を送るなんて、前代未聞ではないでしょうか・・・。このカーチス・ルメイ将軍は、ベトナム戦争のとき、ベトナム北爆を指揮し、北ベトナムを原始生活の国に戻してやると嘘ぶいた札つきの軍人なのです。日本の権力ってどうして、こんなにアメリカに卑屈になるのでしょうか、信じられません。それでいて「美しき日本」を取り戻せなんてカラ叫びをするのですからね・・・。
  硫黄島の戦いによる日本軍の戦死者は2万人、生き残ったのはわずか1000人。アメリカ軍は戦死者6821人、戦傷者2万1000人。地上戦で、アメリカ軍の犠牲者が日本軍を上まわった珍しい例。硫黄島には、今もなお1万人柱以上の遺骨が残っている。今も、ほそぼそと遺骨回収作業が続けられている。
  沖縄本島にも、回収されていない遺骨がある。モノレールの「おもろまち駅」のところは、「シュガーローフヒル」と呼ばれた激戦地跡だ。1週間も戦闘が続き、アメリカ軍の死傷者だけで2662人にのぼった。日本軍の死傷者は不明のまま。ここも、掘れば、今も人骨が出てくる。
  戦前・戦後ずっとずっと戦争してきたアメリカは、戦死者の遺体・遺骨はすべてアメリカ本国に帰還させることを原則としている。それはそれで立派な原則ですよね・・・。
  戦争しない、平和な日本で今日まで来た日本も、アベ政権の下で戦争する国・ニッポンへつくり変えられようとしています。そして、その危険性が今なおピンと来ていない日本人が少なくありません。それこそ「平和ボケ」していて、努力しなくても平和でいられるものと錯覚しているようです。
「抑止力」に名をかりて日本の自衛隊が戦争しかけに海外へ出かけて行ったら、戦場で戦死者が出るだけでなく、国内でもテロ攻撃の被害者が続出することになるでしょう。絶対にそんなことにならないよう、今、声を上げるべきです。
  2011年度の海外戦没者の遺骨収集の予算は15億円。帰還した遺骨はわずか1500柱ほど。自衛隊の戦車一両が10億円というのですから、あまりにも少なすぎます。せめて戦車を減らしてでも遺骨収集にお金をまわすべきでしょう。
  いったい、この狭い日本に戦車なんか持っていて、誰と戦うというのでしょうか・・・。馬鹿げています。

(2015年5月刊。740円+税)

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