弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2015年11月15日

マルトク・特別協力者

警察

(霧山昴)
著者  竹内 明 、 出版  講談社

 久しぶりに警察小説を読みました。
 警備公安警察が活躍する話なのですが、首相官邸の思惑とは違ったところで行動するハグレ警察官が登場したりして、読ませます。
 ネタバラシになるようなことは紹介できませんので、専門用語の解説をとりあげてみます。
 マルトクとは、特別協力者のこと。公安組織が獲得し、情報提供者として運用する、外国の諜報員や犯罪組織の構成員のこと。
 リエゾンとは、外遊中の政治家の移動、買い物、食事までのロジステックを組む、いわば御用聞き。もてなす相手によって、大変な気苦労を強いられる。一方で、気の利いた立ち回りができれば、政治家とのパイプができる。若手外交官にとっては貴重な仕事だ。そうやって人脈がつくられていくのです・・・。
 警視庁では、人事異動の直後に新しい上司が部下の自宅を訪れる「家庭訪問」という前近代的な制度がある。配偶者との不和はないか、子どもの非行はないか、怪しげな人物と同居していないか、そういった素行を確認する。
 尾行するときの対象者を客と呼ぶ。客に気づかれないために、尾行班のうち一人だけを客の直近に置き、頻繁に入れて替えていく。これが先頭引きという尾行陣形だ。
 秘匿尾行は狩猟に似ている。背後につける者は客の視線や息づかい、筋肉の緊張から目的地を読みながら追っていく。
訓練された諜報員は尾行者を切るための点検を行う。電車の「飛び降り」や「飛び乗り」逃げ場のない路地で180度方向転換をする「佇立反転」。中には尾行者を捕まえ、逆問(逆尋問)する猛者(もさ)もいる。
 公安総務課機材班。公安部の秘撮・秘聴の機材には、世間に公開できない非合法のものも存在する。こうした特殊機材を一元管理し、開発、設置、運用まで手掛けるのが機材班だ。
 著者はTBSに入社して海外特派員やテレビのキャスターなどで働き、公安警察への取材を続けているとのことです。
 この本を読むと、警察っていったい、何をするところなのか、常識が反転することになると思います。ご一読ください。


(2015年10月刊。1500円+税)

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