弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2015年11月 8日

受験は母親が9割

社会

(霧山昴)
著者  佐藤 亮子 、 出版  朝日新聞出版

  3人の息子を東大理Ⅲ(医学部)へ進学させたスーパーママの体験記の第二弾です。
その合理的な手法に目を開かされるとともに、最後まで徹底してやり抜いた実行力には驚嘆すると同時に、頭が下がります。
著者の夫が私の親しい弁護士なので、前著に引き続いて著者サイン入りの本を贈呈していただいたのでした。
きわめて合理的な子育てが実践されたのですが、それでも著者は、楽しみながら、そして息抜き、手抜きも按配・加減しているという点で大いに共感するところがあります。
受験ですから、目標ははっきりしています。それに合わせて日常生活がすべて進行していくのですが、読んでいてギスギスしたところがないので、ひょっとしたら、我が家でも出来るのでは(出来たのでは)と思わせるのです。
前著を読んで、もっと詳しく知りたいという人に向いた本だと思います。つまり、私は、まずは前著(カドカワ)を読んだうえで、本書を読むことをおすすめしたと思います。
3兄弟が通っていたのは灘(なだ)中学・高校です。奈良の自宅から神戸にある学校まで電車を乗り継いで1時間40分かかります。大人でも嫌になるほどの長い通学時間ですが、3兄弟は6年間やりとおしたのです。しかも、サッカー部にも入っていたというのですから、すごいものです。
そして、母親である著者は、毎朝、午前4時半に起床して9合のご飯を炊き、3兄弟と夫の弁当を作り続けました。3兄弟は午前6時すぎに家を出ます。朝ご飯のためには、別におにぎりを握って持たせるのです。
そして、昼間も昼寝付きの専業主婦どころではありません。子どもたちの勉強の準備をするのです。問題集をコピーしたり、大事なところにはマーカーをつけたり、、、。
夜は、子どもたちが寝るまで起きていますので、午前2時になることもしばしば、、、。
なんとタフな母親でしょうか。子育てのプロと自称しているのも理解できます。よくぞ続いたものです。私のよく知る夫の果たした役割は「1割」だということですが、それはそうかもしれませんが、見えないところで著者を大いに支えていたような気がします。
子どもを勉強させるためには、ただ「勉強しなさい」と言うだけではダメ。子どもが勉強できるように、親は徹底的にサポートする。翌日の持ち物をそろえてカバンに入れ、忘れものがないかチェックするのは母親の役割。
3兄弟と妹には、すべて名前に「ちゃん」をつけて呼び、「お兄ちゃん」とは呼ばない。兄弟すべて、いつも同じ扱いをする。これを徹底した。
子どもからすると、母親は完璧すぎない。家の中は散らかっていて、庭も荒れている。母親は割り切っている。それでも、家の中は、基本的にのびのびした雰囲気で過ごせる家庭だった。
夫婦ゲンカもあったようですが、いつも母親の勝ち。なので、一瞬のうちに終わる。
「そんなに勉強ばかりでは、かわいそうだろう」「子育ては、私の責任、口出ししないで」
いやあ、これには、まいりました、、、。
勉強するのは、人としてより豊かに生きていくためなんだ。子どもたちには、何度も話して聞かせた。うむむ、そうなんですよね、なるほど、、、。
いわゆる「東大脳」は、生まれついたものではなく、育て方で決まるもの。子どもたちは、勉強が楽しいと目を輝かせていた。塾の日は、心待ちにしている、とても楽しい日だった。
私も、小学4年生から中学3年生まで塾に通いました。学校とは違った教え方で、よく分かりました。でも、私なりの勉強法が分かりましたので、高校になると塾には通わず、Z会の通信添削のみにしました。これには大いに刺激を受け、また励みになりました。
3兄弟は、勉強するのは同じ部屋。つまり、各自の子ども部屋というのはありません。テレビを見るときは2階にあがらないといけません。1階のリビングにはテレビがないのです。我が家では、子どもたちがいるあいだテレビはありませんでした。子どもたちが家を出てしまった今はテレビがありますが、私は基本的に今もテレビは見ません。録画したものを見ることがあるだけです。
どんなテストでも、目ざすのは100点。ほめるのは、ほどほど。母親は何事にも動じず、感情的にならないことが大切。
私がこの本を読んで、あっと驚き、今でもそんなことしていいのかと疑問に感じたことがあります。それは、3兄弟が1歳から公文式教室に通って、読み、書き、計算をはじめたということです。ひょっとして、これがすべての基礎だったのかもしれません。でも、これって、本当にいいこと、必要なことなのでしょうか、、、。
とても実践的な、ぐいっと目の開かれる思いのする本です。子育てに少しでも関心のある人には強くおすすめしたいと思います。
佐藤先生、今後ともどうぞよろしくお願いします。
(2015年7月刊。1300円+税)

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