弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2015年11月 4日

武器ビジネス(上)

社会

(霧山昴)
著者  アンドルー・ファインスタイン 、 出版  原書房

 自民・公明の安倍政権が安保法制法を強引に成立させてしまいました。このとき、アベ首相は今後の日本の平和を守るために必要な法制だと高言していましたが、実際には、日本が世界各地の紛争に武力介入しようとするものです。その結果、日本社会の平和が大きく脅かされることになるのは必至です。
 ですから、多くの国民が安保法制法案を戦争法案だと名づけて反対してきたのも当然のことです。アベ政権が現実にすすめているものの一つが軍需産業の育成・強化です。戦車や潜水艦などの軍事品を諸外国にどんどん輸出してもうけようというのです。日本も、アメリカやイギリスそしてドイツやフランスと同じような死の商人になろうとしています。
 自分がもうかりさえすれば、自分の家族が死ななければよその家族の誰が死のうと知ったことではない。ましてや、外国人がいくら死んでも関係がない。これがアベ政権です。本当に恐ろしい人たちではないでしょうか。それこそ血も涙もありません。いえ、血もしたたる強欲の輩(やから)です。この本は、そんな戦争ビジネスの実態を世界的視野で暴いています。
 サウジアラビアの指導者たちは、臣民には厳格なコーランの教義の厳守を要求する一方で、自分たちの行いは、彼らの信仰とは、これ以上ありえないほどかけ離れていた。
 サウジアラビアがアメリカやイギリスから武器を購入するとき、王族たちは莫大な賄賂を収得していた。高級車、飛行機、高級リゾートでのぜいたくな休暇、豪華なショッピング、、、。
 これって、アベ首相たちが、高級料亭やレストランでぜいたくざんまいをしている一方で、庶民は倹約精神を押しつける道徳教育に熱心なのとまるで同じですよね、、、。
 なにしろ、月1億円、年間10億円もの使い放題の内閣官房機密費があるのですから、やめられませんよね、ぜいたくは、、、。私は、そんなアベ首相は絶対に許すことができません。戦争への道連れなんかしたくないからです。日本で自爆テロが頻発するようになってから、あのときアベ首相に反対しておけばよかったなんて後悔しても遅いのです。
 2010年、世界全体の軍事支出は総額1,6兆ドルにのぼった。地球全体で、ひとりあたり235ドル。これは、2000年から53%増加している。そして、全世界の国内総生産の2、6%にあたる。アメリカは国防予算が7030億ドルをこえ、国家安全保障に毎年1兆ドルをついやしている。大小の通常兵器の取引は、毎年、総額600億ドルにのぼる。
 アメリカ、ロシア、イギリス、フランス、ドイツ、スウェーデン、オランダ、イタリア、イスラエル、中国は、常に武器と軍需品の最大の製造国であり、輸出国である。
武器取引には贈収賄や腐敗行為が蔓延し、完全に公明正大な武器取引はごくわずかしかない。
 兵器産業の腐敗した秘密主義の手口は、販売国と購入国の両方で、説明責任のある民主主義を土台から揺るがしている。
武器取引は、全世界の取引の腐敗行為の40%以上を占めている。武器取引は、表向きの世界と影の世界、政府と商業と犯罪行為の錯綜するネットワークであり、我々をもっと安全にするどころか、たいていは豊ではなく貧しくする。そして、我々のためでなく、自己の利益に奉仕する少数のエリートの利得のために管理され、見たところ法律が及ぼす、国家安全保障の機密主義に守られ、誰にたいしても説明責任を負うことはない。
 政治家たちは、日本に限らず表向きはキレイゴトを口にしつつ、裏では汚い金をふんだんに我がモノにしている。その典型が武器ビジネスなのです。あまりにもおぞましいので、目を覆いたくなるほどです。でも、しっかり目を見開いて究明し、根絶したいものです。
(2015年6月刊。2400円+税)

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