弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2015年11月 2日

セキララ憲法

司法

(霧山昴)
著者  金杉 美和 、 出版  新日本出版社

 富山県出身で、今は京都で活躍している女性弁護士が憲法の意義を生き生きと語った本です。何がセキララ(赤裸々)かというと、著者の悩み多き半生が本当に赤裸々(セキララ)に語られているのです。
 大学(ハンダイ)では航空部に所属し、グライダーを操縦していました。そして、エアラインのパイロットを目ざしたのです。残念ながら合格できずに、次はフリーター生活。美人の著者は、イベントコンパニオンとなり、大阪は北新地のクラブでホステスとして働いたのです。5年間もホステスをやって、人間を表からも裏からも深く見る目を養ったといいます。うひゃあ、す、すごーい、すごいです・・・。たしかに、夜のクラブでは人生の深くて暗い断面に何度も直面したことでしょうね。
 選挙があっても、投票にも行っていない生活。あるとき、何気ない話で、弁護士が向いているということから大転身。わずか2年で司法試験に合格したのでした。さすがの集中力です。
 この本の序章は、日本の自衛隊が安保法によって海外へ派遣される話から始まります。
 戦場でのストレスから、帰ってきたら廃人同様になってしまうという、おぞましい結末を迎えます。アベ首相のいうような、「リスクはまったくない」どころではありません。
 憲法は、私たちの一人ひとりの幸せのためにある。
 暗黒のフリーター時代、無明(むみょう)の闇の底に沈んでいたとき、いっそ戦争でも起こらないかと思ったことがある。想像力が働かなかったから、どこかで戦争なんか自分とは関係ないと思っていた。
 だけど、本当に戦争になったら、死ぬのはアベ首相や、その取り巻き連中ではなくて、私たち自身、私と私の子どもたちなのだ。
 憲法9条は、日本人の私たちが戦争で死なないための最大の武器なのだ。
 自分自身の過去を恥ずかしさとともに客観的に語り、日本の将来を心配して、一緒に考えましょうという、本当に頼もしい本です。 一気に読めます。ぜひ、あなたもご一読ください。
(2015年8月刊。1300円+税)

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