弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2015年9月14日

ウルフ・ウォーズ

生き物


(霧山昴)
著者  ハンク・フィッシャー 、 出版  白水社

 アメリカのイエローストーン公園にオオカミを復活させる取り組みをたどった本です。
 オオカミは、かつては嫌われものの筆頭でした。赤ずきんちゃんの話でも、オオカミは悪い奴として登場します。なので、オオカミを打ち殺すのは当然という風潮がしっかり社会に定着していました。同じようにピューマが家畜を襲っても、ピューマを根絶やしにしろという声が起きたことはありません。ピューマを見た人が少ないこともありましょうが・・・。
 アメリカ北部のオオカミの回復は軌道に乗っている。そのための一つは、家畜生産者がオオカミの被害にあったとき、民間の基金によって補償金を支払うという制度をつくったことです。その二は、自分の土地でオオカミが子を産んだとき、その土地の所有者に5000ドルを提供するようにした。
 オオカミを復活させるためには、やはり、このような経済的手当も必要なのですね・・・。
 1930年、アメリカのほとんどの州からオオカミの姿は消えてしまった。かつて、イエローストーン地域だけでも、オオカミは3万5000頭以上いると推定されていた。オオカミがいなくなると、シカが急速に増えはじめた。
 1995年1月、アメリカの魚類野生生物局は、カナダから空輸してきたオオカミ4頭を原生地域に放した。
 いま、イエローストーン公園には、年間350万人もの観光客が押し寄せる。そして、その相当部分がオオカミ目当てだ、ここではオオカミによる人身事故は起きていない。オオカミ目あての観光客は、地域経済をうるおし、オオカミの復帰で回復した自然は世界中から来る観光客を魅了するだけでなく、教育の場として、多くの親子連れや学生たちでにぎわっている。
 オオカミの大半は、発信機なしの野生のままの状態で生息している。人々は、それを見て、当たりまえのことと思っている。
日本でも、北海道でエゾシカやキタキツネが増えすぎていることが以前から問題になっています。それもオオカミがいないことによる現象の一つです。
 日本でオオカミを復活させるのはできないのでしょうか?
 ちなみに、オオカミが人を襲う心配は、ほとんどないということです。
            (2015年4月刊。2600円+税)

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