弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2015年8月 7日

穏やかな死に医療はいらない

人間

                                (霧山昴)
著者  萬田 緑平 、 出版  朝日新書

 医師や病院に任せきりにしている限り、自分らしい最期を迎えることはできない。自分らしく死にたいと思ったら、病院を出て自宅に帰るのが一番。
 外科医だった医師が、今では在宅緩和ケア医に転身して5年の経験をふまえて、このように断言しています。なるほど、なるほど、そう思いながら一気に読みすすめました。
治療を諦めるのではない。治療をやめて自分らしく生きる。治療をやめることで、穏やかに、自分らしく生き抜いて、死ぬことができる。もちろん、治る病気は治したほうがいい。
著者は43歳のとき、それまでの外科医から在宅から、在宅緩和ケア医へ転身しました。
食べることが苦痛だったら、それは食べないでくれという身体のサイン。上手にやせていくのがいい。亡くなる直前まで歩いている人は、やせてがりがりの身体になれた人たち。
 上手にやせていき、そのまま「老衰モード」にもちこめたら、なお、あっぱれ。
ほとんどの医療者は、自分や自分の家族なら胃ろうはしないと考えている。胃ろうを安易にしてはいけない。場合によっては、途中でやめることも必要。
 高齢になったら、安易に病院に行かないことを勧める。年寄りが入院すると、体力、筋力、ものを飲み込む力があっという間に奪われてしまう。
発熱しても、時期が来れば自然に下がることは多い。本人が食べないときには、「栄養のため」といって、無理に食べさせないこと。無理に食べさせずに我慢していると、また食べられるようになるもの。
抗がん剤治療は、がんとの戦いというよりも副作用との戦い。身体中に毒ガスをまくようなもので、がんだけでなく正常な細胞もやっつけてしまい、患者の身体は激しいダメージを受ける。
 抗がん剤の治療を受けて1~3ヶ月後の効果判定で効果が少なければ、さっさとやめたほうがいい。抗がん剤は、治療中止のタイミングがよければ、最大の延命効果がある。
 具体的な余命の数字を言うことはない。それは非常にむずしいことだし、患者がそれを知って、ひとつもいいことはない。むしろ、ウソをつかないで、状況を悟ってもらうことのほうが大切。
とても実践的な本だと思いました。私も、がんになったときには、抗がん剤で、あまり苦しみたくはないと考えています。といっても、悟りきれずに、じたばたするのかもしれませんが・・・。その可能性は、大です。
 がんに関心のある人に、広く一読をおすすめします。
(2015年2月刊。760円+税)

  • URL

カテゴリー

Backnumber

最近のエントリー