弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2015年7月30日

アメリカン・スナイパー

アメリカ

                               (霧山昴)
著者  クリス・カイル 、 出版  ハヤカワ文庫

 映画をみましたので、その原作を読みたいと思いました。
 映画も原作も、アメリカのやっていることは、まったくの間違いだと言わざるをえません。
 「敵」の有力者を一人ずつスナイパーを殺していったとしても、その国を全体として支配できるわけがないのです。一人の狙撃手が敵軍の戦闘員160人の殺害に成功した。これは、局所(ミクロ)に見たら、すごい人数です。しかし、大局的にみると、なんという数字でもありません。何万、何十、いえ何百万人もの大衆を一人のスナイパーが支配できるはずもありませんから・・・。
 そして、そんなにたくさんの「敵」を殺した兵士の多くは、精神的におかしくなってしまうのです。160人を殺した伝説の英雄は、なんと「狂った」味方の兵士からアメリカで射殺されてしまうのです。
 シール(SEAL)の兵士の離婚率は、異常に高い。
 スナイパーとして、照準器を除いているときには、両方の目を開けておく。右目は照準器腰にみていて、左目は全体を見ている。これで、状況把握がしやすくなる。
 スナイパーは、市街地では、180メートルから360メートル内を狙う。郊外だと730メートルから1100メートルを狙う。そして、頭ではなく、体の中心を狙って討つ。はずしにくい。どこにあたっても、相手は必ず倒れる。
 民主主義をイラクにもたらすために命を危険にさらしたわけではない。命を危険にさらしたのは、友人のためであり、友人や同じ国の仲間を助けるため。戦争に行ったのは祖国アメリカのためであり、イラクのためではない。祖国が自分をイラクに送り込んだのは、あのくそったれどもがアメリカに来ないようにするためだ。つまり、イラク人のために戦ったことなど、一度もない。
 3日間、戦闘に出かけ基地に帰って一日休む。まず眠り、それからテレビゲームをやったり、家に電話をかけたり。基地から発信される通話は、すべて録音されている。
 イラク(ラマディ)で殺されたいのなら、警察官になるのが手っとり早い。また、警察組織には汚職がはびこっている。
 バグダッドのなかにあるサドル・シティでは、市民は普通に仕事に出かけ、市場で買い物をしていた。その一方で、銃を手にして脇道から忍び寄り、壁をつくっているアメリカ人兵士を狙う連中もいる。
 ファルージャは、ひどかった。ラマディは、さらに辛かった。サドル・シティは最悪だった。
 今の自分は、初めて戦争に行ったときの自分ではない。誰もが変わってしまう。戦場に行くまでは純真な心を持っているが、とつぜん世の中の裏側を目にする。
 戦争は、まちがいなく人を変える。死を受け入れるようになる。
 2013年2月、カイルは、テキサスの射撃場で射殺された。
 カイルは、このとき、除隊したあとで民間軍事訓練会社を経営する一方で、心身に障害を負った元兵士を支援する活動に従事していた。カイルを撃ったのは、PTSDを患う元海兵隊員だった。
 武力・戦争に頼るだけでは何も解決しないことに、一刻も早くアメリカ国民は気がついてほしいと思います。そして、日本にはアメリカの過ちを繰り返してほしくはありません。
 安倍首相の強引にすすめる戦争法案の成立を阻止するため、引き続きがんばります。
(2014年10月刊。860円+税)

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