弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2015年6月12日

大脱走

イギリス

                               (霧山昴)
著者  サイモン・ピアソン 、 出版  小学館文庫

 1963年の映画『大脱走』は、私の若いころにみた忘れられない映画の一つです。スティーブ・マックィーンの格好いいオートバイ姿を思い出します。
 この本は、3度目の大脱走を敢行したロジャー・ブッシェルの実像を紹介したものです。実話だったのですね。しかも、捕虜収容所からの3度目の脱走だったとは、驚いてしまいます。
 映画の主人公でもあるロジャー・ブッシェルは、イギリスの空軍少佐でしたが、イギリスの弁護士でもありました。
ロジャー・ブッシェルは、ケンブリッジ大学卒の法廷弁護士だった。ロジャーたちは、11ヶ月かけて、収容所から外へ通じる3つの地下トンネルを掘りあげた。
 このとき、200人の捕虜が脱走する計画だった。そのため、偽造パスポート、コンパス、地図、食料、民間人の服、ドイツ軍の軍服を身につけていた。
 ロジャーは、9カ国語を話せた。フランス語も、ドイツ語も得意だった。すごーい、ですね。
 イギリス軍では、脱走マインドが軍隊のなかに植えつけ、育てられていた。脱走は将兵の義務である。軍人は、捕虜となっても、現役の戦力であり続けるのだ。日本とは、大変な違いですね。
トンネルの立坑は、振動音を記録するマイク音を拾えない深さまで掘られ、寝台や羽目板からはずしてきた木の板を支柱にして、頑丈にし、電灯で照らされ、換気システムも取りつけられていた。
 掘削はチームでおこない、安全と思われたときだけ作業することになっていた。安全が最優先だった。
 トンネルは、三つ。三つあれば、一つが発見されても、残りの二つに頼ることが出来る。
 トンネルを照らすための電力は、建物の二重壁のあいだを通っているドイツ軍の配線を分岐させることによって得られた。リード線は、二重壁の中を通り、そのあと床下から立坑へと通っていた。昼は電気が止められ、その代わりにマーガリンに詰めたランプが使われた。それは1回に1時間だけ灯り、毎夜、点検のために携行された。
 立坑が完成してからは、作業は朝の点呼のあとに始まり、夕方の点呼の数分前まで続けられ、そのあとトンネル掘削者の二番目の交代組が地下にもぐり、門限の直前まで作業した。この作業は三交代制だった。各作業員は6人だった。
 立坑と三つの部屋を掘るために3つのトンネルから、それぞれ12トンずつの砂が出た。さらに、トンネルを3フィート掘るたびに1トンの砂が出た。これを「ペンギン」となって、散布場所までもっていく。
この脱走プロジェクトに何らかの役割で参加していた600人のうち500人が脱走への参加を希望したが、定員は200人だった。最初の30人は、ドイツ語を自由に話せるなど、脱走成功が高いと脱走委員会が認定した人たち。残りは、さまざまな投票によって決められた。
 「みんなを国に帰すだけが目的じゃない。ドイツ兵のとんまどもの顔に泥をぬるうことにもなるし、脱走兵の捜索にドイツ軍の兵力を使わせることにもなるんだ」
 実際にトンネルから脱走したのは76人だった。それでも大戦中の脱走としては最大規模のものとなった。そして、大半のものが捕まり、銃殺された。それでも、3人の航空兵はイギリスに帰還することができた。
33歳で生涯を閉じたビッグXの壮絶な人生を知ることができました。
(2014年2月刊。924円+税)

 明日(13日)の土曜日は、午後2時から福岡市民会館(大ホール)で、弁護士会主催の安保法制に反対する市民集会とパレードが企画されています。雨は降らないようですので、ぜひ近くの方はお出かけください。
 それにしても、安倍政権の暴走ぶりはひどいものです。3人の憲法学者が国会で一致して違憲と明言したのは当然ですが、これを安倍政権は無視して強行採決にもち込もうとしています。こんな憲法違反は許せません。

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