弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2015年5月19日

NHK-危機に立つ公共放送

社会

(霧山昴)
著者  松田 浩 、 出版  岩波新書

 私はテレビを見ませんので、NHKを利用しているのは、毎朝のラジオ・フランス語講座と日曜日の「ダーウィンが来た」(録画しておき、寝る前に見ます)だけです。
 昔々は、朝の連続テレビ小説の「おはなはん」(樫山文枝の主演)を楽しみにしていました。その後は、「Nスペ」などの真面目な番組を見ることもありません。映像よりも活字の世界で生きていたほうが、私の要求を満たしてくれると思っているからです。
 それにしても、いまの籾井(もみい)という会長はお粗末すぎます。恥を知らない日本人という典型ではないでしょうか。いくら安倍首相のお気に入りといっても、これほど愚劣な人物が日本を代表する天下のNHKの会長とは信じられません。自分に、資格がないことの自覚がないのは安倍首相と同じで、救いようがありません。
 三井物産出身ということですが、その会社も大したことがないと言うしかありませんよね。だって、こんな大会社の副社長が、こんなつまらない男でもつとまるというのですから・・・。いやはや、日本の大会社のレベルも地に墜ちたものです。
 NHKの元総合企画室局長が、「NHKは、創設以来、過去最大の危機に直面している」と言うのに、同感するばかりです。
 公共放送にとって大切なことは、政治家を監督すること。「籾井発言」の問題の本質は、公共放送にとって生命である「自主・自立」が根底から脅かされているということにある。
 NHKには、公権力に対峙して、国民の「知る権利」や言論・表現の自由を守るためにたたかったという実績はない。常に永田町(自民党)の動向にばかり気をつかい、政府による政治介入に対して妥協と譲歩を重ね、自主規制に終始してきた。したがって、「権力監視」の意識はNHKでは育ちようがない。なんだか、そこまで言われると、悲しくなってきます。
 戦争に反対し、抗議デモをしている人々について、全国的そして国際的な現実の一部として報道すべきなのだ。
 私も、本当にそうだと思います。いまのNHKは、本当に不甲斐ないとしかいいようがありません。
 公共放送の「自主・自立」を守るためにたたかわない、そしてたたかってこなかったNHKの不甲斐なさに問題がある。
 まったく同感です。あまりにも安倍政権の言いなりになりすぎです。
 NHKのなかにも、リベラルな人材や見識を持った幹部がいないわけではない。しかし、そんな良識派が多数派になり、主流派になることができない権力構造がある。組織として権力とたたかってでも自主・独立を守ろうという伝統はない。
 これって、本当に残念ですよね。そこが、イギリスのBBC放送とNHKの最大の違いではないでしょうか・・・。困りました。
(2014年11月刊。840円+税)

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