弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2015年5月10日

遺品整理士という仕事

社会

                                (霧山昴)
著者  木村 榮治 、 出版  平凡社新書

 遺品整理士という仕事があることを初めて知りました。まだ国家資格ではありません。でも、今の日本には必要な仕事だと私も思います。だって、一人暮らしの年寄りがたくさんいて、孤独死で発見される人が次々にいるんですから・・・。
遺品整理とは、故人のもちものを受け継ぐものと、受け継がないものとに分け、リサイクルに出すか、ゴミとして処分する。遺品整理は、分別、清掃、査定、搬出、処分である。
 遺族の指示のもと、この一連の作業を、心をこめて請け負うのが遺品整理士の仕事である。遺品整理士の仕事は大まかに言うと、分別と運搬に分けられる。そして、作業する前に、召集・消毒・脱臭の専門業者に来てもらうことがある。
 遺品整理の関連業者は、今や日本全国に5000~6000業者もいる。
 そして、高額請求によるトラブルが目立つ。
 「ゼロ円回収」と無料をうたう業者は、「ゼロ円」という値段をつけて引きとったのだから、受けとった品物はリサイクル価格のあるもので、廃棄物ではない。だから、廃棄物処理法は適用されない。つまり、許可がなくても回収できると主張する。
 日本は、ひとり暮らしのおばあさんの多い国。女性における単独世帯の割合のピークは、80~84歳。独居していた女性の部屋の9割から、現金が出てくる。男性の場合には、お金よりもいかがわしいものが出てくる。
仏壇は、海外へ日本の高給民芸品として輸出されることがある。
 セルフネグレクト。怠慢、無関心が自分自身に向けられること。ゴミ屋敷で生活している人です。風呂に入らない。規則正しい生活をしない。きちんとした食事をとらない。ゴミを捨てず、家の中を悪臭の漂うままにする。自分を社会的な存在として保とうとしないので、周囲とも交流しない、引き込もってしまう人が大半。孤立死の8割は、生前、セルフネグレクトだった。
 著者は、遺品整理士鑑定協会をたちあげ、通信制で認定している。受講期間は2ヶ月間。合格率70%。現代日本に必要な職業だと思いました。
(2015年3月刊。760円+税)

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