弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2015年5月 2日

オーガニックラベルの裏側

社会

                               (霧山昴)
著者  クレメンス・G・アルヴァイ 、 出版  春秋社

 従来型の養鶏や条件の悪い有機養鶏場で発症するのがカニバリズム。鶏は、互いに首や背中、尾そして尻周りの羽をつつきあう。そのため、体表が広く羽がむしりとられて皮膚が露出するため、感染症が発症しやすくなる。
 群れの上下関係が確定していないときにも、カニバリズムが起きやすい。
 鶏は鶏舎から出ようとしない。自然界では、鶏は森の周縁部に生息しているので、広い場所で身を隠すところがないようなところに出るのを鶏は恐れる。
オスのヒナは、生まれたその日に工場内のベルトコンベアーでシュレッダーまたはガス室に送られる。オスは卵を生まないから。
 鶏は、はじめに濃度の薄いガスにさらされる。呼吸困難になり、パニックに陥って大暴れする。その後、より高い濃度のガスで気絶させられる。そして、回転シャッターにのせられて、一秒に3羽のペースで鶏は解体され、全自動工程でプラスチック容器にきれいに収まる。
 この本は、有機畜産・有機農業といえども、家畜は劣悪な環境で飼育されていること、天然の在来種ではなく、ハイブリッドが利用され、農薬も使われ、形が悪いというだけで大量の作物が廃棄されていることを明らかにしています。
 有機農業が本来の理想とかけ離れてしまった理由は、大規模化、産業化にある。それをスーパーマーケットなどの大規模な小売企業が推進している。
 スーパーマーケットが納品量や形などについて理不尽な要求をするから、生産者は生き残るためには有機農業の理想を捨てるしかない。
 有機農業だからといって、手放しで礼賛したり、安心してはいけないということのようです。
(2014年11月刊。2200円+税)

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