弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2015年3月24日

フランスの肖像、歴史・政治・思想

ヨーロッパ

著者  ミシェル・ヴィノック 、 出版  吉田書店

 フランスを知ると、日本という国もよく知ることが出来ます。
 フランス国民とは、まず時系列的には、長い政治的中央集権化の成果である。最初に国家があった。そこからすべてが出発した。封建制度化での分裂状況から、カペー王朝の辛抱強い努力によって、国家が形成されてきた。
 イル・ド・フランス地方の小さな領地から始まって、この王朝は代々やがてフランスになるべき土地を少しずつ領地に加えていった。そのために武器を用いて血を流し、また政略結婚も活用した。彼らの王杖のもとに服従した住民たちは、さまざまな言語を話し、その生活習慣も多様だった。徴税を通じて(しばしば反乱を起きたが)、地元の領主よりも上位に位置する君主の支配下にあることを知った。
 信心深き国王、これこそが「さまざまな人種」すべてを統合する第一の存在だった。国王は、あるいは愛され、あるいは憎まれ、また恐れられたが、いずれにせよフランス人の頭と心のなかでますます大きな位置を占めるようになった。国王は一人で国民を体現し、フランスを具現化する存在だった。
 フランス人同士は決して愛し合ってはいないが、フランス人はフランスを愛している。
 フランス人の5人のうち4人が、自分はカトリックだとしている(1988年までの世論調査の結果)。大多数のフランス人が自らをカトリック信者だとしつつも、神の存在については大きな疑問をもっている。
 フランスには、中央集権的機構に対して、二つの感情が存在している。一方は、やむことのない不平不満があり、他方には同様に際限のない国家に対する要求がある。
 フランス人は、国家が好きではないが、国家に対してすべてを求める。そして、官僚に対する警戒感と、その仲間に加わりたいという、アンビバレントな感情がある。
 フランスでは、まずストライキを決行し、それから交渉に入る。それは、フランスの労働組合に力があることを意味しない。組合の組織率はヨーロッパで最低レベル(10%未満)でしかない。
 フランスでは、対話の重要性は強調されるが、実際に対話しようとする人は、ほとんどいない。
 フランスでは、庶民はブルジョワをまね、ブルジョワは貴族を模倣する。
 歴史的な貴族は、3500家族40万人。このほか偽貴族が1万5000、貴族の作法をまねようとする平民が何千万人といる。
 革命の国であるにもかかわらず、いまもなお貴族階級が公的な性格を帯びている。爵位を戸籍、身分証明書、パスポートに記載することができる。
フランス人の王政のノスタルジーには、政治が汚いものだという認識と結びついている。
 シャルル・ド・ゴールは、エッフェル塔に似ている。建てられたときには、誰からも好かれなかった。しかし、今では高さ300メートルの塔のないパリなど考えられない。ド・ゴール将軍も同じだ。
知識人の任務は間違いなく存在する。それは、民主主義の擁護者であること。有機的かつ批判的に、民主主義の擁護者であること。民主主義は非常に脆弱で、未完成で改良の余地のある体制だが、これが唯一の人間的な体制なのである。知識人は民主主義を否定し、掘り崩し、打倒しようとする反対者に対抗して、その原理を再確認しなければならない。
 フランス人の学者による知的刺激にあふれた本です。このところ何年もフランスに行っていませんが、また行きたいと思わせる本でもありました。毎日のNHKフランス語と、毎週のフランス語レッスンは相変わらず続けています。ちっともうまく話せないのですが・・・。
(2014年3月刊。3200円+税)
 チューリップが一斉に花開きました。これから4月中旬までチューリップ祭りを楽しむことができます。そばに濃い赤紫色したクリスマスローズの花も今ごろ咲いています。よく見ると、今年も土筆(ツクシ)が立っています。日が長くなって、夕方6時半ころまで庭に出て、あちこち手入れをしていました。さすがにジョウビタキは現れませんでした。もう北国に帰っていったのでしょうね。私の個人ブログでチューリップの写真を楽しんでください。

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