弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2015年3月 4日

安倍官邸と新聞

社会


著者  徳山 喜雄 、 出版  集英社新書

 新聞が安倍首相の言動の問題点を国民にきちんと伝えているのか、私は日頃から大いに疑問を感じています。この本は、新聞を漫然と読んではいけないと警鐘を乱打しています。まことに、そのとおりだと思います。
 安倍官邸のメディア戦略は巧妙で、きわめて有効に働いている。
 新聞は二極化現象を起こしている。読売・サンケイ・日経新聞に対して、朝日・毎日・東京新聞が対抗している。
 安倍首相をとり巻くスタッフたちは、周知な準備をしたうえで、ひそかにリークしながらメディアをうまく利用している。
 集団的自衛権の論議のとき、安倍首相の私的諮問機関である安保法制懇の議論状況は、読売新聞を通じて流された。それは北岡伸一座長代理が読売新聞の主要な社外筆者であることにもよっている。政府関連の情報を読売新聞が独自に流していった。
 そもそも、この安保法制懇というのはメンバー14人の全員が集団的自衛権の容認賛成派で占められていた。法律上の根拠もない機関なのに、あたかも権威ある機関であるかのように報道するのは、いかがなものなのでしょうか。
 2013年10月に、アメリカのケリー国務長官とヘーゲル国防長官が来日したとき、二人そろって千鳥ヶ淵戦没者墓苑を訪問した。これは、安倍首相に対する「靖国参拝しないように」というメッセージであったことは明らか。それにもかかわらず、安倍首相は靖国神社の参拝を強行した。アメリカの面子は丸つぶれだったので「失望した」とコメントした。
 安倍首相の意向が働いた人事として、日銀総裁、日本郵政社長、内閣法制局長官、海上保安庁長官、そしてNHKの会長と経営委員・・・。
 NHKの籾井勝人会長は、まさに安倍首相のロボットのような存在です。
 NHK会長が、その発言を問題視され、国会で答弁を求められるなど、きわめて異例のこと。公共放送機関のトップというか、そもそも報道機関として権力監視という役割を籾井会長は自覚していない。要するに、いつだって、何だって金もうけの対象としてしか考えていないような人物なのでしょうね。残念です。
安倍首相の二枚舌を許さない厳しい報道を新聞はもっとすべきだと思います。
(2014年9月刊。760円+税)

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