弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2015年2月11日

憲法と沖縄を問う

司法


著者  仲山 忠克・井端 正幸ほか 、 出版  法律文化社

 戦後、沖縄は日本国の一部でありながら、アメリカに支配されていた。しかし、このアメリカの沖縄支配は、国際法に反する、違法な軍事占領もしくは事実上の支配にすぎなかったのではないか。
 アメリカの支配下にあるとはいえ、沖縄にアメリカ合衆国憲法が適用されたわけでもない。沖縄は、「憲法番外地」だった。
 私が大学2年生のとき(1968年)、沖縄でついに主席公選制が実現し、屋良朝苗(革新)主席が誕生しました。そのとき感激を今も覚えています。もちろん、私は、そのころ沖縄に行ったことなんて、ありません。
 米軍は、住民のいなくなった土地を囲い込み、また住民を排除して、現在もある広大な米軍基地をつくりあげた。しかし、戦闘行為が終了したあとの土地取り上げは、財産権の保護を定めたヘーグ陸戦法規(条約)に違反する。
 1972年5月、沖縄は日本に復帰し、日本国憲法の適用を受けるようになった。私が司法修習生になった年のことです。それまでは、沖縄に行くには同じ日本なのに、パスポートが必要でしたし、公然たる共産党員は行けませんでした。
 日本政府は、1978年からアメリカ軍に対する「思いやり予算」をはじめた。はじめは62億円だったのが、2008年には2083億円にまでふくらんでいる。
基地で働く労働者の賃金や基地にかかる光熱費その他を、私たち日本国民の税金でまかなっているのです。沖縄にいる海兵隊は、イラクなどへの殴り込み部隊であって、日本防衛のための軍隊ではありません。それなのに、経費丸がかえなんて、とんでもないことです。
 アメリカ軍は、日本の領土内で活動しているにもかかわらず、日本の「法への支配」を受けないで活動しています。いわば「無法地帯」があるのです。
 アメリカ軍への不公平な優遇措置を定めた日米地位協定について、日本政府は一度も見直しをせず、アメリカの言いなりです。これでは、日本は完全な独立国家とは言えません。
 よく「押しつけ」憲法だという人がいますが、この不公平な現実には目をつぶって、何も文句を言いません。不思議なことです。
 アメリカ軍は、軍隊としても軍人個人としても、何ら法的責任を追及されることがない。
沖縄の弁護士と学者が共同執筆した本です。学生向けの教科書として使われることを意識した本だということもあって、大変わかりやすい内容になっています。
編者の一人である仲山忠克弁護士より贈呈していただきました。正月休みの人間ドッグのときにホテルで読みふけった本の一つです。人間ドッグは、積んどくになった分厚い本を滞貨一掃する絶好の機会なのです。ちなみに、昨年(2014年)に読了した単行本は602冊でした。それだけ、あちこちに出かけて移動時間が多かったということです。健康と経済状態に恵まれて出来たことですので、ありがたいことだと思っています。
 仲山先生、遅くなりましたが、いい本を贈呈いただきまして、お礼を申し上げます。
(2010年7月刊。2000円+税)

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