弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2015年1月20日

降りられない船

朝鮮(韓国)

著者  ウ・ソックン 、 出版  CUON

 昨年(2014年)4月16日に起きたセウォル号の沈没事件についての本です。
 私は、この事件について、残念でたまりませんでした。ニュースを読みながら、無念の涙を流してしまいました。だって、前途有為の高校生が300人近くも一挙に亡くなってしまったのですよ。信じられない大事故です。
 どうして、こんな大事故が起きてしまったのか、ぜひとも知りたいところです。
 このセウォル号は、韓国の前は、鹿児島と沖縄のあいだで運行していた船だったのですね。そして、韓国で船体が大幅に改造されています。
 船体の後部が増築されたため、本来なら左右をつないでいた船体後尾の甲板は、新設されたサンドイッチパネルの壁で最初から塞がれていた。残りの非常口も施錠したまま運行する習慣のため、開けることができなかった。
 セウォル号の船体が完全に傾いてからは、ドアは開かなかった。すでに海水が入り込んで傾いた船体から海に飛びこみ、水面下へ泳いで出て行った数人だけが最後に生きて戻った。船長以下の船員は脱出しています。
 高校生は、「じっとしているように」という船内放送の命じるままに、じっとしていたのです。これを書きながら、私は無念の涙が止まりません。いったい、この船内放送は、誰が、何のために出したのでしょうか・・・。
 この6千トンを超えるセウォル号の船長は、契約職であり、契約して1年にも満たなかった。
 もちろん、船長の責任は重いと私も考えます。現に裁判で重い有罪判決を受けました。しかし、問題は船長の個人的な資質にあったというのではないということです。
 セウォル号は済州島に行く船だった。済州島にいくのに簡単なのは飛行機だ。格安航空便もある。ところが、高校生が修学旅行で済州島に行くのを船で行くように行政がすすめていた。なぜか?
 1万トン以下のフェリーは、石油の高騰と交通手段としての競争力の低下などで居場所がなくなっていた。そこで、高校生の修学旅行が、教育当局の勧誘によって、カーフェリーに集中した。そして、この修学旅行生によって、途絶えていた路線の運行が復活したのだ。
 そのとき、船の寿命を20年から30年に延長して、日本では経済的寿命が尽きて退役する船が、韓国では中古として再稼働することが可能になった。
 日本の船を鉄くず同然の値段で買った人たちが、船についての基本的な原則と常識もないまま、都合のいいように改造した。船体が傾いたときの復元力に必要な、負荷を均等に合わせる最低限の作業もできなかった。縦方向の増築などで船尾がいじられてしまったため、左右のバランスをとることすらできなかった。
 この日、午前8時52分に船内にいた高校生から、「船が沈没中です。助けください」という電話を消防本部、そして海洋警察は受けている。ところが、午前9時30分に船長たちが海洋警察の船で救助されるとき、高校生は一人として救助されていない。何ということでしょうか・・・。
そして、セウォル号に近づいた警備艇は、二次被害を恐れて、船内に乗客がいることを知りながら、みすみす手をこまねいていた。しかも、他の船には接近するのを禁止してまで・・・。
これまた、信じられません。何があっても船内に侵入せよとの命令が出されるべきだったと著者は指摘しています。私も、まったく同感です。
 韓国の体育の授業には水泳の時間がなく、学校にプールがないそうです。これには意外というか、驚きでした。日本と同じように海に囲まれた国なのに、なぜなのでしょうか・・・。
 ともかく、国民の安全第一で行政はあってほしいものです。日本だって、フクシマの原発事故についての政府の対応をみていると、とても韓国政府の対応を批判できるとは思えません。放射能を今なおたれ流しているのに、早々と「収束宣言」するなんて、そして、原発再稼働を狙うなんて、日本政府も狂っているとしか言いようがありません。
 政府は、国民の安全第一で政治を進めるべきです。怒りが改めて湧きあがってきました。
(2014年10月刊。1500円+税)
 日曜日の午後から、ジャガイモを庭に植えつけました。メークインとキタアカリです。ダンシャクは店に売っていませんでした。いつものようにジョウビタキが近寄ってきましたので、写真にとってやりました。私の個人ブログで紹介します。とっても可愛いです。
 チューリップの芽が地上に出はじめました。春が近づいています。

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