弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2014年12月18日

チャイナ・セブン

中国


著者  遠藤 誉 、 出版  朝日新聞出版

 赤い皇帝・習近平というサブタイトルのついた、中国を分析した本です。
中国共産党の政治局常務委員(チャイナ・ナイン)の一人だった周永康が逮捕された。本来、このチャイナ・ナインは逮捕されないという不文律があった。それを習近平は破った。
 捕まった周永康は江沢民派なので、習近平と江沢民との権力闘争だとみられている。しかし、著者は権力闘争ではないとみています。なぜなら、習近平自身が江沢民派だから。
 少なくとも腐敗問題に斬り込まなければ、中国共産党による一党支配体制は必ず崩壊してしまうから。
 最近、中国で腐敗により摘発・処分を受けた人数は18万人をこえ、チャイナ・ナインの一人だった周永康、さらに中央軍事委員会副主席だった除才厚まで捕まった。前代未聞の事態である。
 習近平は、利益集団の解体を狙っている。利益集団解体の先には、利益を独占している国有企業の改革が待っている。国家の60%の富を0.4%の者が独占しているような現状を打破することだ。富の極端な一極集中化をもたらしている利益集団を解体してからでないと、抵抗勢力が巨大化しすぎていて、前に進めない。
 チャイナ・セブンは「共青団」「紅二代」あるいは「江沢民派」というように、きれいに分けることができない。7人のうち紅二代が3人もおり、かつ「江沢民派」に偏っているのが特徴だ。
 もっとも重要なことは、チャイナ・セブンの圧倒的多数が習近平、またはその父母と接点があること。
 チャイナ・ナインがチャイナ・セブンになっても、中共中央政治局常務委員会では多数決による議決を鉄則とする集団指導体制を実行していることに変わりはない。
 もし今、国家主席が習近平でなかったとしたら、中国は、この10年間の政権のなかで、あるいは崩壊したかもしれない。
 社会主義が生き残るのか、資本主義が生き残るのか。あるいは、一党支配体制が生き残るのか、という壮大な実験に習近平は挑もうとしている。
習近平は、毛沢東に次ぐ力を持った指導者としての地位を気づきつつあると言ってよい。
 2012年1月、胡錦濤は、「腐敗を撲滅させなければ、党が滅び、国が滅ぶ」と、中共中央総書記として最後の言葉を述べた。しかし、この腐敗を招いたのは、共産党の一党支配体制だ。その支配体制を崩すことなく、腐敗を撲滅することなど、できるはずがない。
 腐敗撲滅へ向かって進めば進むほど、共産党統治は政治体制改革を余儀なくされ、政治体制改革を断行すれば、共産党の一党支配は必ず崩れる。進んでも留まっても、崩壊はまぬがれない。
 習近平は、1953年6月15日、北京で生まれた。父親は習仲勛。父親は16年間の囚われの生活を送った。
 習近平は、文化大革命のとき、延安地区へ追放されて苦労している。そして、文革末期になって清華大学に入学することができた。
 中国の四大利益集団は、鉄道閥、石油閥、電力閥、電信閥である。そこは腐敗の巣窟でもある。
 チャイナ・セブンのうち、習近平と李克強以外の5人は、みな2017年の党大会で定年退職してしまう。
 中国の前途を考えるうえで読んでおくべき書物の一つだと思いました。
(2014年11月刊。1600円+税)

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