弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2014年10月 9日

限界にっぽん

社会


著者  朝日新聞経済部 、 出版  岩波書店

 ほんの少し前まで、「ジャパン・アズナンバーワン」とされ、安定雇用のもと、経営と働き手が一体になった日本型経営は、日本の強い競争力の根源だと言われていた。終身雇用と手厚い福利厚生で企業が従業員を支え、分厚い中流層が社会の安定の基盤だった。
 いま、社内に首切り旋風が吹き荒れている。残った社員にも不安と不信が強まり、職場では誰もが孤立し、会社は乾いた荒漠としたものになった。
 雇用の危機を放置したままで、経済は成長できるのか・・・。
マクドナルドの店内は、午前0時になると、店内の風景が一変する。サラリーマンや学生たちと入れ替わりに、しびれた手提げ袋を抱えた男性たちが入ってくる。「マクド難民」と呼ばれてくる人たちだ。
お金がないから、ネットカフェには泊まらない。ネットカフェは1000円かかる。マックなら100円のコーヒー1杯で午前2時までいられる。
マック閉店のあとは、「ブックオフ」に向かう。マックの店員は大半が非正規社員。17万人がアルバイトで働く。
 大阪では、働く人の45%が非正規社員だ。
 非正規社員が広がったのは、1990年代後半の「派遣の原則自由化」による。これは、本当に罪深いと思います。大企業本位の自民党政治の最大の誤りの一つだと思います。大企業は栄えても、日本の若者からは将来展望を奪ってしまいました。
 生活保護のバッシングがひどい。しかし、不正受給は全体の2%。保護を受ける資格が十分にあるのに、わずかな収入でガマンしている人が圧倒的に多い。ところが、残念なことに、そのような人が身近な生活保護受給者の足を引っ張るような行動もするのです・・・。
 安倍内閣は生活保護費の給付水準を引き下げるのに狂奔しています。強いものには税金を安くしてやって、弱者には「自己責任」を押しつけるのですから、政治家失格です。
 現実の日本社会には、ばりばり仕事をするサラリーマン男性だけがいるわけではない。高齢者も障害者も社会に適応できない若者など、さまざまな人がいる。みんなが、それぞれにがんばれる多様性を組み込まないと、経済も社会も活性化しない。
日本の超有名大企業が社員に自主退職を促し、株主や銀行に約束した「人減らし」計画を達成するために「追い出し部屋」をつくっている。
 パナソニック、NEC、ソニー、朝日生命などなど・・・。
 ノエビア化粧品は、「苛酷なノルマ」を押しつけて、社員を追い出す。その手口が明らかになった。会社側は「辞めろ」とは決して言わない。社員が自ら「辞める」と言い出すまで、じりじりと追い込む。
 2012年8月、東京地裁立川支部は、ベネッセコーポレーションの「追い出し部屋」を違法と断じる画期的な判決を出した。
 人減らしをすすめるとき、人事担当は、「解雇・クビ・やめろ・やめてくれ」とは絶対に言ってはならない。会社に残るのを、いかにあきらめさせるか、だ・・・。
 ユニクロは、ブラック企業としても有名です。新入社員が入社して3年内に退職した割合(離職率)は、2006年組で22%、2007年組は37%、2008~2010年組は46~53%と高まっていった。同期の入社組の半数は会社を去っていく。そして、休職している人の42%はうつ病などの精神疾患にかかっている。これは正社員の3%にあたる。
もっと働く人を大切にすること、とりわけ若者が安定して長く働ける職場を確保すること、これをなくして日本社会の平和と安定的成長はのぞめないと思います。
 いま安倍首相のやっていることは、それに真っ向から逆行しています。働く中高年を大切にせず、若者を使い捨てにして、超大企業のみを優遇しています。そして、軍需産業だけは栄えるというのです。本当に、戦後最悪の政治が進行中だと思います。
(2014年月刊。760円+税)

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