弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2014年10月15日

「立憲主義の破壊」に抗う

司法


著者  川口 創 、 出版  新日本出版社

 著者は名古屋の弁護士です。2008年4月、名古屋高裁が航空自衛隊のイラクでの活動は憲法9条に違反するという画期的な違憲判決を出しましたが、そのとき弁護団事務局長として活躍していました。
 安倍内閣による集団的自衛権の行使容認がいかに憲法に反し、危険なものであるかを名古屋高裁判決をふまえて、とても明快かつ分かりやすく解説している100頁ほどのブックレットです。値段も1000円ですし、ぜひ買って、手にとってお読みください。すっと読め、すとんと胸に落ちること間違いありません。
 安倍首相は、集団的自衛権の行使を認めたのは、国民の命を守るためだという。
しかし、戦争は、いつだって自国の国民を守るためというのを理由にしてきた。
 まして、集団的自衛権は、日本が外国から武力攻撃を受けたときの国土と国民を守るための個別的自衛権とはまったく異なるもの。それは、自分の国の防衛とは無関係の、第三国間で起きた戦争に参戦していくことを意味している。
本年(2014年)7月1日、安倍内閣が行った閣議決定は、あくまで政府の「宣言」にすぎない。法律がつくられなければ、閣議決定自体に意味はない。そして、その法律が違憲無効となれば、政策も実現できない。
安倍首相は、わざと個別的自衛権と集団的自衛権とをごちゃまぜにして、あたかも集団的自衛権が個別的自衛権の延長線上にあって、ひとまわり大きな枠組みでもあるかのように偽装しようとしている。
集団的自衛権は、自分はやられなくても、仲良しの子がけんかを仕掛けられたとき、助太刀することだと説明されることがある。しかし、もっと詳しく正確にいうと、やられようとする子というのは、実はプロレスラー級の実力をもっていて(アメリカ)、それに対して小学1年生くらいの小さな子(北朝鮮)が仕掛かったところを、屈強な大人(日本)がプロレスラーと一緒になって小さな子をボコボコにやっつけるというもの。
まさに、マンガです。私は、このたとえは秀逸だと感嘆しました。まことに、そのとおりですよね。友人というのは世界最強の屈強な人物(アメリカ)なのです。
アメリカを北朝鮮が正面から攻撃するような事態をまともに想定している人はいないと思います。そんなことをしたら、金正恩政権は何時間も、もたないこと必至です。
アメリカのイラク侵略戦争のとき、日本の航空自衛隊は、クウェートからバグダットまで武装したアメリカ兵を空輸していた。この事態を直視して、日本人はアメリカのイラク侵略戦争に加担し、加害者になっていると厳しく指摘したのが名古屋高裁の違憲判決の意義だった。
 7月1日の閣議決定は、外国に対する武力攻撃が発生したとき、日本がすぐに自衛隊を行使できるとはしていない。「これによりわが国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある」場合に限って自衛権を発動できるとした。これが、限定になるのかどうか・・・。
 「限定」になんかならない。まったくのごまかしだと内閣法制局の元長官が断言している。
 本当にそのとおりです。現に、安倍首相は、国会答弁で、ペルシャ湾で日本のタンカーが自由に航行できなくなったら、「わが国の存立が脅かされ」る事態だと明言しました。日本に石油備蓄が全くないかのような安倍首相の答弁に私も開いた口がふさがりませんでした。
 集団的自衛権って、なんだがか難しくて、良く分からないなと思っている人には、この本をご一読されることを強くおすすめします。なにしろ100頁、1000円の本なのです。さあ、手にとって読んでみましょう。
(2014年8月刊。1000円+税)
 台風一過、強風が少し残っているなか、チューリップの球根を植え込みました。
 雨をたっぷり吸い込んでいますので、スコップで掘るのは容易でしたが、さすが200個の球根だと腰にきます。ミミズをたくさん掘りあげてしまいました。畳一枚分の広さに200本のチューリップが咲いてくれます。春が楽しみになりました。あと300本、植えます。

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