弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2014年9月15日

古代ローマ人の愛と性

ヨーロッパ


著者 アルベルト・アンジェラ、出版 河出書房新社

 「古代ローマ人の24時間」などに続くシリーズ第3弾です。驚くことの多い古代ローマ人の生活です。
古代ローマ人には、奇妙な慣習があった。夫は妻からのキスを受ける権利があると定めた「接吻制度」があり、妻は毎日、夫の口にキスすることが法律で義務づけられていた。その主な目的は、女性がワインを飲んでいないかを調べることにあった。
 女性は絶対にワインを飲んではならず、妻が夫に隠れて純粋なワインを飲んだら、夫は妻を殺す権利があった。女性がワインを飲むことは、姦通と同等の罪だとみなされていた。ええーっ、そんな嘘でしょ・・・。こんなことが、本当に守られていたとは思えません。
 手へのキスには、敬意と服従と示すという明確な意味があった。人前では、身体と身体が触れあう行為は、いかなるものでも破廉恥とみなされ、道徳や貞操に反するとされていた。
 良家の女性は、一人で出歩くようなことは決してなかった。外出するときには、コメスと呼ばれる信頼のおける奴隷か親族によって常に警護されていた。夫たちは、こうして妻を監視していた。
 富裕層の娘にとって、結婚前に男性と性的関係をもつことは考えられなかった。女性は処女のまま結婚式にのぞむことが義務づけられていた。
夫に先立たれた女性は、再婚するを1年のあいだ禁じられていた。
古代ローマ社会で、もっとも自由を享受していたのはおそらく解放奴隷の女性たちだった。
 しかし、名門既婚女性(マトローナ)は、厳格な行動規範を平気で無視していた。若い男性を求め、行きずりのセックスや一夜限りのアヴァンチュールを好む熟年女性がいた。
 富裕層の女性は12~14歳で結婚した。下層の女性は16~18歳だった。
ローマ時代には、離婚がとても容易だった。離婚にあたっては、現代と異なり、法的な手続きは一切必要なかった。死別より離別のほうが多かった。
 古代ローマでは、夫が妻を殴ることは日常茶飯事だった。妻を殴っても、殺してしまわないかぎり、夫が裁判にかけられることはなかった。妻に対するDVは、中・下層階級において、より一般的だった。
 古代ローマ人の私生活の様子を知ることのできる面白い本です。
(2014年4月刊。2500円+税)

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