弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2014年9月 8日

小さき生物たちの大いなる新技術

生き物


著者  今泉 忠明 、 出版  ベスト新書

 バイオテクノロジー(生物工学)というのは、よく聞かれる言葉ですが、バイオミミクリー(生物模倣)という言葉は聞いたことがありませんでした。自然をよく観察してヒントを得て、その優れた点を真似することで効率のいい進んだ技術を生み出すというものです。
 新幹線の先頭車両の形状は、カワセミのくちばしから頭部にかけての形状に似せている。
 フクロウが音を立てずに飛ぶことのできる秘密は風切羽にある。端が綿毛のようにほつれているため、翼を羽ばたいて飛ぶときにも音がほとんど出ない。そこで、新幹線のパンタグラフの支持装置に風切羽をまねたギザギザを付け、30%の騒音削減に成功した。
 フンコロガシは、糞球の頂上にのぼって「ダンス」をすることによって、どの方向から光が来ているのかを認識して自分の進むべき方向を定めている。
 暗い夜には、脳は小さく、視力の弱いフンコロガシは、天の河の星々の光を頼りにまっすぐに糞をころがして進んでいく。これが、自動車の夜間運転支援システムのヒントになった。赤外線カメラでとらえた映像をディスプレイに表示し、夜間の視界を拡大することによって安全走行に寄与しようというもの。
 カメレオンの体色が代わるのは、皮膚細胞に白・赤・青・黄・黒の粒があり、紫外線を浴びると、その粒の大きさに変化が生じて、体色が変化する。
 温度によって光る色が変わる染料を開発した北大チームは、紫外線をあてると光る希土類(レアアース)に着目した。温度によって色が変わる「カメレオン発光体」は、宇宙船の開発に大いに役立っている。この塗料を機体表面に塗って、その色の変化によって温度を正確に検知できるというわけである。
 ガラガラヘビは、ピット器官における温度センサーが、0.002度の変化を感じるほど敏感なため、狙った動物の体温によって捕まえることができる。この熱追尾装置が追突空ミサイル「サイドワインダー」に応用されている。
 クモの糸を鳥もちの代用品として使うのが紹介されていますが、私も実際、鳥もちの代わりにクモの糸を二又の枝先にからませて、子どものころセミを捕まえていました。
 クモの糸(縦糸)は、同じ重量で比べたら、鋼鉄の5倍もの強度をもつ。人間の毛髪の10分の1の太さしかないのに、時速30キロをこえる速さでハチが飛んできても破れることなく捕まえる強度がある。
 ヤモリが窓ガラスに張り付いているのは、ヤモリの足の裏の微細な毛の先端と壁面の凹凸が分子レベルで吸い付いて、粘着力が生まれるから。
 カタツムリの殻がいつも汚れずにきれいなのは、その殻にとても細かいミクロの「溝」が刻まれているから。その溝に水が入り込んで、殻の表面にごく薄い水の膜が張られている。汚水は、殻の本体には付着せず、水にくっついているから、簡単に流れ落ちる。
 そこで、空気中の水分になじみやすい外壁タイルを開発し、雨が降ったら自動的に汚れが落ちる外壁システム「ナノ親水」をつくった。
 知らないことがたくさんあり、生物の隠れた能力を人間が少しずつ生かしていることも教えられました。生物の多様性を尊重したくなる本でもあります。
 ということは、自然をむやみに破壊してはいけないということです。大型公共工事、辺野古の埋め立てなんて、とんでもありませんよね。
(2014年2月刊。819円+税)

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