弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2014年8月20日

転換期の日本へ

社会


著者  ジョン・W・ダワー/ガバン・マコーマック 、 出版  NHK出版新書

 日本は、アメリカへの従属を続けるのか、それともアジア中心の新たな安全保障体制を構築するのか、その選択が迫られている。まことに、そのとおりだと私は思います。
日本にアメリカ軍基地が置かれている理由の一つに、万一、日本が再び自立的に軍国主義的な道に進もうとしたときに備えて、日本に対する管理を確実にすることがある。
憲法は、自衛隊の持てる兵器と参加できる任務の双方を制限するうえで、十分な影響力を保ち続けている。
 日本の再軍備に対する制限を取り除くために改憲を支持する人々は、改憲すれば、日本は国連が後押しする平和維持活動に参加する「あたりまえの国」になることができ、自国を防衛する自立的な能力を高めることができる、と論じる。だが、実際のところ、日本は再軍備すればするほど、アメリカの戦闘活動に実質的な貢献をしなければならなくなるという、逆らい難い圧力の下に置かれることになる。
 サンフランシスコ講和は、中国と韓国という、もっとも謝罪と償いを受けるべき国々を排除したばかりでなく、無理やり歴史を前に進め、忘却を促した。
 アメリカは、少なくとも3回、中国に対して核兵器を使用することを真剣に検討した。1度目は1954年9月の第一次台湾海峡危機、2度目は1958年8月の第二次台湾海峡危機、そして3度目は1962年10月のキューバ・ミサイル危機である。
 1972年に施政権が日本に返還されるまで、沖縄には19の型の核兵器が貯蔵されていた。その大半は嘉手納基地にあり、1000発近い核兵器が常置されていた。これらの核兵器は沖縄返還時に撤去された。
 それでも、その後も現在に至るまで、いつでも核兵器をアメリカは持ち込めるというのが、例の有名な「密約」です。
米・中・日の三角形は、不均衡である。米・中という二つの自立した国家に対して、三番目の国・日本が今もって真の自立を欠いたままになっているからだ。これこそ、サンフランシスコ体制のもっとも厄介な遺産である。
日本はアメリカの属国としての地位にあり、先見性がなく、逆効果を抱くことも多いアメリカの外交政策に対して、ほぼ無制限といってよい支持を与えてきた。
 2008年、中国は日本を除いて、外国としては最大のアメリカ国債保有国となり、世界最大の債権国となった。中国の国内総生産(GDP)は2010年に日本を追い抜き、「国家資本主義」の下の中国経済はアメリカに次ぐ世界第二位の規模となった。
日米中すべてが強力な機能障害に陥っている。中国に透明性が欠けていることは明らかだが、秘密性や説明責任の欠落は中国に特有のものではない。堕落、腐敗、妄想、希望的観測といったものは、すべて日米中の三国すべてに存在する。
日米同盟と言うが、「同盟とは名ばかりで、実態はない」、「現実にはアメリカが一方的に決定する」だけのもの。その建前は、日本を守るためだが、それはアメリカの防衛と国益拡大のためだと解釈したほうが正しい。
 アメリカが同盟国としての日本を失えば、超大国として世界の指導的地位にはとどまることは出来ない。
 アメリカは、毎年、詳細な年次要望書を日本に送り、アメリカの利益にとって「障害」なるものを取り除くように支持する。そのようなことは日本以外の国との関係では考えられない。
 日本の政官界における属国性が、あまりにも深く強靱であるため、自主性と独立を回復する機会が訪れるたびに、それとは逆のコースと選ぶ傾向が見られる。
 およそ1300年以上ものあいだ、日本は大国の従属国となることに抵抗してきたが、この60~70年ほどのあいだに、海の彼方のアメリカに対して喜んで「属国」の割合を担うようになったのは、なんという歴史の皮肉だろうか。
政策遂行のために暴力や戦争に訴えようとする強い傾向があるのは、アメリカに他ならない。
 アメリカは、中国に対してきわめて両義的に振る舞っている。一方で、中国を最重要の仮想敵とし、もう一方で、緊密なパートナーのように接している。
 内向きの愛国主義は大局的には日本にとって有害になる。それは国際社会で尊敬されないどころか、不信や増悪さえ買うことになる。
 日本はアメリカに従属すべきだと主張する人々がナショナリストを名乗り、他方で日本の利益をアメリカのそれよりも優先させる人が「反日」ではないかと疑われるという倒錯がある。
 私も、日本を愛し、未来を憂うからこそ、日本を壊してしまおうとする安倍首相を許せないと考えるのです。
(2014年4月刊。860円+税)

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