弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2014年8月14日

睡眠のはなし

人間


著者  内山 真 、 出版  中公新書

 眠れない夜のために。
私は幸いなことに寝つきは良いほうです。たまに、すぐに眠れないことがあるのですが、それは間違って夜7時以降にお茶かコーヒーを飲んでしまったときのことです。原因は、はっきりしています。
 ただ、夜中に一度、目を覚ますことがあります。そのときは、トイレに入って用を足し、顔を洗って、もう一度、すっきりして横になります。すると、再びすぐに寝入ることができるのです。
 睡眠をしっかりとるのが、何よりの元気の素です。徹夜なんて、弁護士になってから、したことがありません。
不眠を訴える人は、5人に1人。30人に1人は、睡眠薬を服用している。
 朝型か夜型かは、遺伝子による。つまり、生まれつきの体質である。
 中高年層が若年層より早く出勤するのは、やる気があるからではなく、脳にある睡眠調節機構の老化によるもの。
 睡眠は、他の生物と共通の仕組みで制御されている。眠っているときには、私たちは人間というより、霊長目に属する、ただの哺乳類になる。
 身体が休む時間帯に、大脳をうまく沈静化して休息・回復させ、必要なときに高い機能状態の覚醒を保証する機能のために、睡眠がある。
 高等な哺乳類にとって、睡眠とは、身体が休むときに、脳の活動をしっかり低下させ、休養させるシステムなのだ。体内の温度を積極的に下げ、まるで変温動物のようになって、脳と身体をしっかり休息させる。
 体内の温度が下がると、生命を支えている体内の化学反応が不活発化する。つまり、代謝が下がり、休息状態になる。
赤ちゃんの手が温かくなるのは、眠たいサインだといわれるのは正しい。熱を逃して、脳の温度を下げ、眠気を誘って脳を休ませている。
 一晩の80%がノンレム睡眠だ。すやすやと深い寝息をたて、ゆったりと眠っている。ノンレム睡眠のときには、日中に疲れた大脳皮質は眠っているが、脳の一部では耳から入る情報をモニターしている。
レム睡眠は、一晩の睡眠の20%を占める。呼吸が浅く、やや不規則で、目が開き加減でまぶたがピクピク動く。レム睡眠は、夢をみている睡眠だ。目の動きが活発であるのと対照的に、全身の筋肉の緊張が著しく低下している。
 ノンレム睡眠中は、レム睡眠にみられるような鮮明な夢をみることはない。大脳がほぼ完全に休んでいるからだ。ノンレム睡眠の意義は、主として脳を休ませることにある。
 もともと身体を休ませるためのレム睡眠があり、これは脳を積極的に休ませる機能はなかった。高等動物になり、大脳が発達してくるにしたがって、脳を積極的に休ませる仕組みが必要となり、ノンレム睡眠が発達した。
 身体が休むレム睡眠のときには脳は目覚めていて、脳が休むノンレム睡眠のときには、筋肉は完全に休まない。このようなシステムには、眠っているときの無防備な時間を最小限にするという利点がある。
 睡眠時間は、短すぎるのも長すぎるのも健康には良くない。6時間台、7時間台という、ほどほどがもっとも健康的。
睡眠不足は、食欲増強ホルモンであるグレリンを増やして食物に対する欲求を高め、さらに満腹ホルモンであるレプチンの分泌低下により満腹感の得られない状態をもたらす。
 うつ病の人の体温は健康な人よりも高い。体温を下げて心身を休息状態にもっていく仕組みが不調になっているためだろう。
 レム睡眠では、眼球を動かす筋と呼吸のために必要な胸部の筋以外の筋はほぼ完全に弛緩している。夢は、レム睡眠という、ごく浅い眠りの状態に随伴する内的体験だ。
 レム睡眠のときには、外部からの感覚入力と筋肉への運動出力が遮断されて、脳が外界から孤立して働いている状態である。
人間の身体の休息と脳の休息とが微妙に連動していることを知りました。
(2014年5月刊。760円+税)

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