弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2014年8月 2日

風の海峡(下)

日本史(戦国)


著者  吉橋 通夫 、 出版  講談社

 秀吉の朝鮮出兵は、朝鮮の人々に多大の苦難をもたらしました。
 その一つが、人さらいです。日本軍は朝鮮の子どもたちを奴隷のようにして日本へ連れ帰り、日本国内だけでなく、遠く海外へ売り飛ばしたのです。
 子どもたちは首を縄で巻かれ、全員がひとくくりになっている。一人ずつ逃げられないようにしているのだ。
 人取りだ!
 戦国乱世の日本では、捕らえた敵方の男は軍夫にし、女は妾にし、子どもは召し使いにした。文禄の戦のときは、太閣から人取り禁止の触れが出ていたが、今回は出ていない。
 太閣自身も、「裁縫や細工物などに堪能な手利きの女たちを連れ帰って差し出せ」と諸将に命じた。
 日本に連れていって、長崎で売り飛ばす。ポルトガル人と、鉄砲や絹、白糸など南蛮の品々と交換する。ポルトガル人は、世界中の奴隷市場へ商品として連れていって、競りにかける。若い娘や子どもは、いい値で売れる。
 京都には、いまでも耳塚があるそうです。日本兵たちは、朝鮮人を皆殺しにして、その鼻を切り取って塩漬けにして、日本へ送っていました。耳は二つあるけれど鼻は一つしかないからです。
 秀吉が死んで、徳川幕府の時代になって、朝鮮王朝は捕虜を連れ戻すための「回答兼刷還使」(かいとうけんさつかんし)を送り、7500人を朝鮮に連れ戻った。その後、通信使として朝鮮使節団が日本にやって来るようになった。
 子どもの目から見た、無謀なかつ悲惨な朝鮮出兵のありさまをよく描いた小説です。
(2011年9月刊。1300円+税)

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