弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2014年7月15日

アフリカ系アメリカ人という困難

アメリカ


著者  大森 一輝 、 出版  彩流社

 オバマ大統領が誕生したことは、アメリカにおける黒人差別が解消したことのシンボルだとは、とても言えないようです。
オバマは、「黒人大統領」ではない。逆に、「黒人」であることを封印された大統領である。自分が人種差別主義者であるとは夢にも思わない白人たちによって、オバマの手足は固く縛られている。オバマ大統領の口から「人種」という言葉が出るのを許さないという圧力は強烈だ。
 白人国民は、人種主義が見えないが、見えるつもりもない。人種を見ないことにすれば問題は解決するのだという「カラー・ブラインド」論が横行している。
 「黒人」というカテゴリーは、異郷で生きることを余儀なくされたアフリカ諸民族に、共通の経験をもたらし、共通の心性を育んだ。「黒人であること」の屈辱と誇りを、苦悩と喜び、絶望と祈りこそが、「アメリカ黒人」を新たな民族に鍛え上げた。
 南北戦争後のボストンに住む黒人エリートたちは、能力主義(メリトクラシー)が徹底されたら、人種主義は克服されると信じた。これらの黒人エリートたちは、黒人生活の実態を見ようとしなかった。
 1917年にアメリカが第一次世界大戦に参戦すると、黒人は人口比に相当する以上に徴兵に協力したにもかかわらず、軍内部でさまざまな差別を受けた。両人種は厳格に分離されており、黒人兵のほとんどは勇気を疑われ、戦闘部隊ではなく、補給その他の雑役に回された。
 そして、戦争が終わって「母国」アメリカに帰った黒人兵士たちを待ち受けていたのは、人種暴動とリンチだった。1919年末までに、30県の暴動が起こり、80人がリンチで殺された。そのうち14人が火あぶりにされたが、うち11人は、征服を着た元兵士だった。
 現代アメリカにおいてリーダーたるべき黒人知識人の多くは自縄自縛に陥る。人種差別はたしかにある。しかし、だからといって、黒人への特別な配慮や対策を要求したり、黒人が団結して抵抗してしまえば、本来あってはならない人種という区分を許すどころか強調することになる。今やるべきなのは、人種カテゴリーの解体なのだから、差別は個人の努力と才覚によって乗りこえるほかないのだ・・・。
 人種主義から逃げるのではなく、それを直視し、正面から受けとめるべきだという声は同時代の黒人からも上がった。
 現実に対して「ブラインド」になる、つまり目をつぶっていては何もできないのだということを、ボストンの黒人は長い時間をかけて学んだ。自分たちの人生を変えるためには、人種による格差に目を向け、人種差別のない未来を創り出していくしかない。
 アメリカにおける黒人差別の解消は、今なお容易ならざる課題であることを痛感させられました。
(2014年3月刊。2500円+税)

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