弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2014年7月21日

藤子・F・不二雄の発想術

社会


著者  藤子・F・不二雄  、 出版  小学館新書

 オバケのQ太郎、そしてドラエモンときたら、日本人で知らない人はいないと思います。そんな国民的マンガのキャラクターを生み出したマンガ家のコトバですから、とても重みがあります。読んでいて、つい、うんうんとうなずいてしまいました。
 小学校のころは、ひどく人見知りする子だった。カケッコもできず、教室の前に立って話すことができない。そのうえ、なんと、絵が嫌いだった。いじめられっ子だった。
ところが、手塚治虫のマンガに出会って、大きなショックを受けたのです。そのため、マンガを卒業できなかった。ファンレターを書いたところ、手塚治虫から返事が来た。
 昭和27年に高校の電気科を卒業して会社に就職した。ところが、マンガを書きつづけたい。そこへ、手塚先生から、「君たち、上京してきなさい。二人でも十分やっていけるから」という手紙が飛び込んできた。
なんということでしょう。おどろきの手紙ですよね。それほど、才能を見込まれたということでしょうね。
 母親は、息子から上京すると告げられたとき、「そうけ」と平然として答えた。これまた、大した母親ですね。今どき、考えられませんよね。よほど、息子を信頼していたのですね。
 初めは、両国の2畳一間の下宿。押入れもない。半年たって、トキワ壮に移った。4畳半。敷金3万円は不要だった。2年後に、手塚先生に返した。
 マンガを描く意欲をずっと持ち続けられたのは、仲間がいたこと。気が多いというか、好奇心は旺盛だった。
 「オバケのQ太郎」を連載していたときには、それほど人気がなかった。ところが、やめたら抗議のハガキが来た。それで、再開することになった。
 なんとなくわかりますよね。その時時代に生きていた私としては・・・・。
 若いころは、絵もアイデアも早くて、3時間もあれば13頁分を考えついていた。
「キミたちの絵は古い。こんな丸い線は、もうはやらない」
 新人のとき、古くてダメだと言われた。だから、もうこれ以上古くなりようがない。それで、強くなった。
 独創力のための条件は、第一に、数多くの断片をもつこと、第二に、その断片を組み合わせる能力をもつこと。
 人間は本当に複雑ないきものだから、マンガ家は、キャラクターを枠にはめてしまうのではなく、柔軟な目をもってキャラクターの個性を生かし、ある程度自由に行動できるゆとりを持たせていくべきだ。
 思いついたときに、手帳にすぐメモしておく。このとき、タネをふくらませずに書いておくことが大切。自分のスタイルに絶えず挑戦していくことが重要な課題となる。
 結局、自分自身を自作に登場させている。遠い少年の日の記憶を呼び起こし、体験したこと、考えたこと、喜び悲しみ悩みなど・・・。それを核とし、肉づけし、外見だけを現代風によそわせて登場人物にしている。
なーるほど、なるほど、と納得のいく本でした。それにしても、すごいマンガ家です。

(2014年2月刊。700円+税)

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