弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2014年6月 9日

アフリカッ!

アフリカ


著者  松村 美香 、 出版  中央公論新社

 日本の総合商社の若手社員がアフリカ市場を開拓しようとするときに直面する苦難の日々が描かれています。
 たしかに、アフリカ大陸は広いし、膨大な人々が住んでいますから、潜在的なニーズは大きいのでしょう。それでも、ともかく貧困層が多くて、安価であることが何よりの条件という国が多いのも現実です。そこに、中国製品ががっちり食い込んでいて、高品質をモットーとする日本製の進出を許しません。
 そして、治安の問題があります。さらには、病気も心配です・・・。それでも、主人公の日本の青年は、意気高くアフリカに乗り込むのでした。毎日毎日、パソコンに向かいインターネットを眺めるのに飽き足らなくなったのです。
 この本では、アフリカといっても、東部のエチオピア、ケニア、そしてザンビアしか登場しません。エチオピアといえば、マラソンの走者アベベを思い出します。世界最貧国のようです。
 ケニアは豊かな大自然のサファリ国立公園ですよね。でも、先日、福岡から修学旅行に行って、ショッピング・モールでのテロ騒動に危うく巻き込まれそうになったという話を聞きました。
そして、ザンビア。ここは治安がいいそうですが、あまり耳慣れない国です。
エチオピアは世界200ヶ国あるなかで、常に貧困ワースト・テンに入っている。戦争も内戦もないのに最貧困。
フルフルは、エチオピアの典型的な朝食メニュー。インジェラと呼ばれるパンを味付けしたもの。インジェラは、粒子が1ミリしかない土着の雑穀「テフ」を発行させ、縛り固めて直径30センチほどに丸く広げ、鉄板で焼いたもの。表面に泡だったぶつぶつがあり、色は灰色。腐りかけのような、すえた臭いがして、味は酸っぱい。使い古したぼろ雑巾のように見えるのだが、エチオピア人はこの主食をこよなく愛し、頑として食生活を変えようとしない。
日本人にとっての味噌汁と納豆のようなものでしょうか・・・。
 海外へ出れば、誰だってカルチャーショックを受ける。それから逃れてはいけない。カルチャーショックを受けている自分を楽しめ。感受性が豊かな自分を肯定しろ。それが、人間の成長となり、いつかきっと新しいアイデアにつながっていく。
 私も、初めて海外旅行、アメリカだったかフランスだったか忘れてしまいましたが、びっくり仰天の体験でした。これは必要なものだと痛感して、以来、毎年1回は海外に出かけるようになりました。
 ケニアもエチオピアと同じで、テレビや冷蔵庫は韓国製か中国製に占有されている。元宗主国であるイギリスの電化製品を探すのさえ難しい。
 ケニアで人気の日本商品は「つけ毛」(ウィッグ)くらい。
 ケニア人は、合理性よりも楽しさ優先。新しいもの、珍しいものが好き。ケータイも、商売での活用よりも、家族との対話に使いたい。
中国が売っているのは、ケータイだけでなく、情報システム。
 東アフリカでは、主な工場のマネージャーはインド人。インド人は絶対的少数派で、現地に溶け込み、2世、3世の世代になっている。でも、混血はすすんでいない。
 ケニアの不動産業者にはインド人が多い。最近では、インド本国からアフリカに渡ってくるビジネスマンも多い。そう言えば、マハトマ・ガンジーも、アフリカにいましたね・・・。
 ザンビアに限らず、アフリカの官庁街の建物は、いま、ほとんど中国の業者が建設している。ところが、建設して1年もたてば、もうボロボロ。ドアは壊れる。鍵はかからない。窓は閉まらない。エレベーターも怪しいし、配線も危ない。
 それでも、日本の商社はアフリカ進出を目ざすのです・・・。
(2013年12月刊。1700円+税)
 南アフリカのネルソン・マンデラ元大統領が亡くなったときのオバマ大統領の追悼の言葉は味わい深いものがあります。
 「マンデラのおしえを自分の人生にどう活かすか、各人が自問しなければならない。いまも世界には貧困や不正義が溢れている。だが人間の和解に共鳴すると言いながら、貧困撲滅や格差是正のわずかな改革にも反対する人々がいかに多いことか。マンデラの自由への闘争に連帯すると言いながら、批判を許さない指導者がいかに多いことか。それらを横目で見ながら声をあげず、無関心もしくはシニカルな態度に甘んじている人々がいかに多いことか。世界が直面する課題の克服はいずれも容易なものではない。だが、マンデラは『何ごとも達成するまでは不可能に思えるものだ』と語りかけている。私自身もマンデラの闘争に感銘を受け、元大統領への道を進むこととなった。私は、マンデラにはとても及ぶ人間ではない。しかし、それでもマンデラは、私に『よりよい人間になりたい』という気持ちを奮い起こさせてくれる。自分自身のなかにマンデラの大きさを見出そう。そして困難に直面したとき、マンデラが獄中生活を耐え抜いたことばを思いだそう。『いかに開かれた門が狭く、試練が辛くとも問題ではない、自分こそが運命の主人、自分こそが魂の行く手に舵をとる船長であるのだから』と」

  • URL

カテゴリー

Backnumber

最近のエントリー