弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2014年1月26日

新・検察捜査

司法


著者  中嶋 博行 、 出版  講談社

 14年ぶりの書き下ろし小説とのことです。
 横浜の弁護士が江戸川乱歩賞を受賞(『検察捜査』1994年)したのには驚きました。弁護士会の内情を多少とも知るものにとってはいささかの無理もありましたが、読ませるストーリーではありました。
 今回もまた、かなりの無理はあるものの、官僚機構、そして精神医療の問題点も考えさせるストーリーとして、緊迫した展開が続いていきます。弁護士は大没落の時代を迎えている。超難関だった司法試験が骨抜きになり、弁護士人口のビッグバンが起きた。
 生き残るには競争相手を蹴落とし、限られたパイから収入を確保しなければならない。
 大手法律事務所は、依頼人をごっそり取り込むためにマスメディアを利用した派手な広告合戦をくり広げている。法律家の世界が、今や家電の格安量販店なみに、客寄せにしのぎを削っている。
 広告資金を捻出できない個人弁護士が手っ取り早く有名になるには目立つ事件の弁護士を担当すればいい。なかでも、異常犯罪は世間の注目を集めるには再興だ。
法テラスと目される「法ロビー」が登場します。
 法ロビーは、もともと法律上の紛争をかかえた市民に向けて、敷居の高い弁護士へのアクセスと手助けする公的制度だった。若手弁護士の多くは、「法ロビー」から依頼人の紹介をうけてささやかな報酬にありつき、事務所経費を工面していた。
 弁護士人口が過剰になって、いまや逆転現象が起きている。「法ロビー」は、仕事のない貧乏弁護士に依頼人を斡旋する「弁護士の職安」へと変貌している。
女性検事と警察官のコンビのようなスタイルで捜査が展開していきます。
 官僚機関のなかに特殊な部隊があるという設定です。自衛隊になら、ありうるのかなという印象をもちました。
 ハードボイルド小説として読めば面白いと思います。
(2013年10月刊。1600円+税)

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