弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2014年1月 4日

魚影の群れ

生きもの(魚)

著者  吉村 昭 、 出版  ちくま文庫

 ノンフィクションのようなすばらしいフィクション(小説)を作り上げる著者の短篇小説集です。
マグロとりの漁師の世界では40歳以上の漁師は老齢者に入る。大きなマグロとの戦いは、体力を消耗させ、それが長時間に及ぶだけに若い強靱な肉体が要求されるのだ。
それに、マグロ漁は、睡眠不足との戦いであった。マグロの餌である烏賊(イカ)は夜のあいだに沖へ船を出してとらねばならない。烏賊は中型のものが最適で、少なくとも30尾ほどは船の生簀におさめる必要があった。餌をとって帰るのは夜明けに近く、短時間仮眠するだけで、朝食を済ますと、再びマグロをとりに沖へ出て行く。そうした生活を半年間つづけるため、マグロとりの漁師は眼に見えてやつれてゆく。自然に、マグロ漁の漁師は20代から30代までの男に占められていた。
 マグロは、漁の群れを追っている。その中に餌を投げ入れても、食う可能性はほとんどない。釣り上げることができるのは、小魚の群れが逃げ散って、マグロの群れが小魚を追うことをあきらめ一定の方向に秩序正しく泳ぎはじめた折りにかぎられる。そうした状況をつくり出すには、船をその海面に突きこませて、小魚を円散させる以外に方法はなかった。
このように、下北半島の大間のマグロとりの状況が活写されています。
短編小説が4つあり、いずれも味わい深いストーリーです。というか、ネズミやカタツムリの話は正直いって、薄気味悪さを覚えました。それくらい、情景描写が真に迫っているということです。
(2011年9月刊。680円+税)

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