弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2013年12月25日

マッキンゼー

アメリカ

著者  ダフ・マクドナルド 、 出版  ダイヤモンド社

マッキンゼーとか大前研一と聞くと、私には「金の亡者」というマイナス・イメージしかありません。世の中、すべて、お金。カネ、かね、金。お金がすべてを決める。いやですね、そんな世の中って・・・。
マッキンゼーには、オフィスや役員室を占領している、成功を収めた同窓生(アラムナイ)立ちのネットワークが世界中の隅々まである。
 マッキンゼーで年配のコンサルタントは、めったに見かけない。この組織は経験より若さを好む。
マッキンゼーは、価値があるのか疑わしい仕事に対して莫大な手数料をとっている。現実には、単に重役の仕事をしているだけ。
過酷なコストカットのために正当な言い訳を求めている経営者たちにとって、マッキンゼーは頼りになるコンサルタントであるばかりでなく、責任を負わせられる都合のいいスケープゴートである。
 問題は、マッキンゼーの高価な費用は、果たして、本当に見合っているのか。それは難問だ。
コンサルタントは見かけがあってこそ成り立つもの。コンサルティングとは、学位の証書からは分からない能力を、服装やマナー、言葉づかいという外見によって伝えるもの。
 マッキンゼーは、自分たちは企業の最高責任者のためだけに働くのであって、下役たちには用がない。要するに、マッキンゼーは、あくまでも経営者のために働くもので、労働者のためにはならないのですね。この本を読んで私が理解したことは、これでした。よく分かりました。だから、費用も超高額なのですね。
 マッキンゼーは、人材開発をうまくやっている。わずかな金額で若くて未経験な人材を雇いそれからクライアントの費用で教育させる。
ハーバード大学の卒業生にとっても、マッキンゼーへの就職が一生の仕事になることはめったにない。
 多くのコンサルタントは、1年に最大で2000時間分の報酬請求ができる。
 マッキンゼーを雇ったクライアントが、彼らにはその価値がなかったと明言することは、ほぼない。
 これという「商品」のないマッキンゼーにとっては、関係がすべてだ。
 賢明なクライアントは、マッキンゼーを使う最善の方法は入り込ませないことだ。
 マッキンゼーは、自信がすべてだ。成功の秘訣は、成功しているようにふるまうこと。
 マッキンゼーが成功したもう一つの理由は、世界中の経済界に同窓生と友人を送り込んだことにある。
 マッキンゼーは、あの最悪の悪徳企業エンロンからなんと年間100万ドルももらっていたのに、無傷で生きのびたのでした。マッキンゼーは、エンロンで稼いだだけでなく、エンロンを崇拝の対象に押しあげて、その福音を伝えて、「石油企業家」を称賛した。マッキンゼーは、不正な手段で成長していたエンロンを事実上誇大宣伝した。
 ところが、マッキンゼーは、刑事でも、民事でも、被告人になることはなく、議会公聴会に社員が証言を求められることもなかった。これには、業界関係者の多くが憤慨した。
マッキンゼーって、大企業と経営者のためのコンサルタント会社と経営者のためのコンサルタント会社だということがよく分かる本でした。
 コストカットって、要するに、冷酷な人減らしですよね。でも、それだけで企業が発展するとは、とても思えません。
(2013年11月刊。2400円+税)

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