弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2013年11月27日

生活保護リアル

社会

著者  みわ よしこ 、 出版  日本評論社

先日、私の住むまちで、市役所の保護課に市民課に市民からの通報(告発)がありました。生活保護を受けている隣人がうどん屋でうどんを食べているのを見かけた。国から保護を受けているくせに、外食などしてうどんを食べるなんて、けしからん、というものです。
 それを聞いて、本当にびっくりしました。これまで、生活保護を受けている人がパチンコ店に出入りしているのを見かけるが、とんでもない、けしからんという叫び声を聞いたことはありましたが、まさか、うどん屋でうどんを食べていてもぜいたくだ、いけないなんて、信じられない「告発」です。「告発」した隣人は、恐らく外食もせず、せいぜいコンビニ弁当で我慢しているのでしょうね。
 そこには、恐るべき妬み心を認めることができます。
 生活保護を受けている障害者は、嫌がらせにあいやすい。
 生活保護は、あくまで申請主義である。福祉事務所は基本的に生活保護の申請を拒むことはできない。
 だから、「水際作戦」と称して申請自体がないようにしていた北九州市のような自治体があったわけです。
 生活保護は世帯単位で申請する。生活保護受給者の11%は15歳未満の子どもたち。
 生活保護の不正受給はしばしば問題とされるのに対して、必要とする人が保護を受けられない(漏給)ほうは問題とされることがない。日本の相対的貧困率は、16.0%(2009年)。1920万人が生活保護水準より低い生活を強いられている。つまり、日本の生活保護は、必要とする人の20%しか対象としていない。これをさらに減らそうというのがいまの安倍内閣が進めている福祉切り捨て政策である。
 生活保護を受けると、世論に攻められ、遊び半分でネタにされる。しかし、好きで生活保護を受けているわけではない・・・。
生活保護たたきに走る人には、生活の苦しい人が多い。本来なら生活保護を受けられるような人が、受けずにがんばっている人。恥の意識が強くて、自己責任を内面化している。自分は必死でがんばっているから、生活保護を受けている人に対して、「なぜ、あいつは」と思ってしまう。でも、結局、生活保護たたきをしている人は自分の首を締めているだけ。そのことを自覚していない。
 弱いもの同士が「いじめ」あう変な世の中です。その一方で、スーパーリッチは高見の見物をしているわけです。それに乗っかって弱者切り捨ての政治をすすめているアベノミクスって、絶対に許せませんよね。
(2013年7月刊。1400円+税)

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