弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2013年11月23日

真珠湾収容所の捕虜たち

日本史


著者  オーテス・ケーリ 、 出版  ちくま学芸文庫

北海道生まれのアメリカ人です。父親は教会の仕事をしていました。20年も日本で生活していたため、もちろん日本語はぺらぺらです。
 戦争が始まると、日本語のできるアメリカ兵として活躍することになりました。捕虜収容所の担当です。
日本人は抑えられることには慣れている。だから、抑えられながら、表面的に抑えられたと見せて逃げまわる術を心得ている。抑えないで人間扱いすると、勝手が違うので、ある意味では陸に上がった河童のように抵抗力を失う。
 殴られた方が精神的には楽だったかもしれない。捕虜を不名誉と卑下していた者が、虐待を受けたことによって、自分を合理化する理由を見つけるだろう。
 日本兵の捕虜は、情報官の合理的な質問に対してはまったく歯が立たない。一つの事実を総合的に積み重ねていくと、一致点と穴が現れる。その穴を指摘すると、相手はカブトを脱いでしまう。隠しても、「敵」は何もかも知っていると観念する。
捕まった当初は、どんな捕らわれ方をしようとも、誰でも一様に生の歓喜を素っ裸で感じる。傷の手当てをしてくれ、食料もくれる。ところが、体力が回復し、気持ちが落ち着いてくると、一つしかない「日本人」が頭をもたげ、いろんな衣をまとい始める。
外観だけみると、アメリカの軍隊のほうが反将校意識は格段に強い。しかし、内情をみると、日本の軍隊のほうが、もっともっと熾烈だった。
 日本人同士だと将校をこきおろし、憤まんをぶちまけあう。しかし、そこに外部の人間がいると、そのふりさえ見せない。
日本兵捕虜の実態をつまびらかに明らかにしてくれる貴重な本だと思いました。
(2013年7月刊。1400円+税)

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