弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2013年8月29日

「市場と権力」

社会

著者  佐々木 実 、 出版  講談社

竹中平蔵という人物の本性を、よくよく暴いた本です。経済学者というのが、アメリカも日本も、これほどまでに世の中の経済を分析すると称して、実は自分の金もうけに熱中しているのか、その実態を知って愕然としました。
アメリカの名だたる経済学者が、結局、投資顧問とか証券会社に取り入って超高給とりになっているのは、アメリカのことだから、そんなものかと思いました。でも、竹中平蔵をはじめとする日本の高名な経済学者も結局、同じだったのですね。これには、いささか幻滅させられました。もちろん、例外もあるのでしょうが、東大教授の肩書きでTPP推進の弁を述べる人は、ほとんどこれにあてはまるのでしょうね。
竹中平蔵は、超高級マンションを東京都内にいくつも所有しているとのこと。本人は、本がたくさん売れて、その印税で購入したと弁明していますが、それでは説明がつきません。あちこちの大会社の取締報酬が超高額なのです。言わば、マッチポンプのようなものです。政府の中枢に食い込んで、それをすべて自分自身の金もうけに結びつけるのです。そのくせ、日本に本当に貧乏人なんかいるのですか・・・、と平然と問い返すのです。その厚顔無恥には、呆れるというより、怒りすら覚えます。許せません。
 日本で非正規社員が増えたのは、正社員が保護されすぎているためだからだと竹中平蔵は言う。とんでもありません。正社員を既得権益者として竹中平蔵は指弾している。「働き方の自由」を実現するため、解雇規制の緩和が必要なのだと竹中平蔵は言う。
 フツーの人々の生活の安定なんて、竹中平蔵の眼中にはないのですね・・・。
竹中平蔵は高校生のころ、民青の一員だった。もちろん、民青というのは、日本民主青年同盟、つまり日本共産党のシンパの組織です。ところが、一橋大学に入る前のころから、竹中平蔵は民青と訣別し、一路、金もうけの道にまっしぐらです。
そして、共同研究の成果を竹中平蔵一人の著者にしても平気です。共著にすると業績としての価値が低くなるからです。嫌ですね。こんな品性下劣の人とは一緒にいたくありませんよね。
竹中平蔵の所得は、2000年ころ、申告納税額が2000万円ほどなので、9000万円ほどと思われる。これは、政策コンサルタントとして稼いだものだろう。うひゃあ、すごいですね。
 しかも、竹中平蔵は、日本人として支払うべき住民税を免れるため、アメリカに居住しているとして、日本での住民登録の抹消と再登録を繰り返した。
 いやはや、あまりにも「せこい」手法に、呆れかえってしまいます。これが高名な経済学者のすすめる「節税」だなんて・・・。
 そして、竹中平蔵は、内閣・官房機密費(2000万円)を使って、アメリカに留学しようとしたのです。月1億円は内閣が自由に使えるという例の「ヤミ支出」です。竹中平蔵の腹黒さも、ここまでくると、「サイテーの男」としか言いようがありません。
 竹中平蔵は、企業人との出会いを、たちまち、自らのビジネスチャンスに変えてしまう。
 竹中平蔵は、言論の基本ルールを逸脱しているため、言論戦に敗れることがない。これって、「嘘八百」ばかりというころですよね。
竹中平蔵は、自民党政権の中枢に食い込む一方で、反対党の民主党(鳩山)にも手をのばしていた。そして、自民党のなかでも、次の政権を狙いそうな政治家にも・・・。
 これって、あまりにも見えすいていますよね。だから、小泉純一郎には気に入られても、次の麻生からは嫌われたようです。こんな低レベルの男によって日本の経済政策が動かされていたのかと思うと、寒々とした気分になります。
 竹中平蔵と同じレベルの企業家が宮内義彦(オリックス)です。自分のことしか念頭にない人たちによって、日本という国がダメにされるなんて我慢がなりません。
 企業が金もうけすること自体は、私だって悪いことだとは思いません。それでも、それは、従業員をふくめて、みんなの幸せにつながるからいいのではありませんか・・・。自分と自分のファミリーだけよければ、あとはどうなっても「自己責任」だなんて、とんでもないことですよね。読んでいて、思わず腹の立つことの多い本でした。
(2013年4月刊。1900円+税)

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