弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2013年5月20日

南極観測隊

社会

著者  日本極地研究振興会 、 出版  技報堂出版

南極の昭和基地をめぐる50年の歴史が思い出として語られています。貴重な本だと思いながら一気に読了しました。
 タローとジローの話は、私の小学生のころの話です。1年後に生きていたなんて、すごいことだと今も鮮明な記憶として残っています。
 犬ソリを使うために北海道にいたカラフト犬を調べた。道に1000頭近くのカラフト犬がいた。南極でつかうソリ犬に適した50頭近くが稚内で訓練された。しかし、集められたカラフト犬は極地で外の雪の中で寝るのが普通ではない、町中で育った犬たちだった。だから、それぞれ思いのままに走っていく。ソリ犬の訓練はカラフトから引きあげてきたギリヤークの男性が教師になった。タローとジローは、仔犬だったため、ソリ犬としての訓練は受けなかった。
 昭和基地から往復270日間の犬ソリの旅に出た。小柄なテツ(6歳)は、疲れてサボっていた。仕方なく、ソリから放した。ところが、テツは動かない。それどころか、元きた方向に戻っていく。テツをバカにしたため、テツは怒ったのだろう。自尊心を傷つけられ、これでは死ぬしかないと思ったのだろう。
 そんなエピソードも紹介されています。タロとジロは、生後3ヶ月で宗谷に乗せられてきたため、昭和基地を故郷と信じ、そこに踏みとどまったのだろう。そして、アザラシの糞を主食として生きのびてきたのではなかったか・・・。それにしても、成犬たちが皆、餓死するなどしたなかで、よくぞ生き残っていたものです。
 越冬隊員は、この25年間に平均年齢が5歳もあがった。今では、50代の隊員も数人いる。そして、女性隊員も越冬した。
 マイナス60度の野外で排便するのは大変だということです。沸騰した鍋の蓋を取ったようで体温と外気温の差が100度近くもあることを実感させられる。
 たくさんの隕石を南極では収集できるようです。2万6千個以上のうち、日本が相当数を集め、世界一となりました。なかには火星からの隕石も発見しているとのことです。
 それにしても、極地の狭い人間社会で大変なこともあったようです。死亡事故も起きましたし、手術も必要となりました。そして、自分の感情をコントロールできないような人がいたときには、周囲は大変だったようです。時として、無知無謀は罪悪だと思う。そんな指摘もあります。
マイナス60度、70度という極寒の世界で観測、研究してきた人々の労苦に率直に感謝したいと思いました。
(2006年11月刊。1800円+税)

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