弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2013年3月18日

進化を飛躍させる新しい主役

生き物

著者  小原 嘉明 、 出版  岩波ジュニア新書

モンシロチョウについて新しい知見を得ることができました。読んで楽しい本です。なにしろ、モンシロチョウはヨーロッパで発生して、はるばる日本へやって来たというのです。そして、紫外線メガネでメスが白く見えるのは日本型で、ヨーロッパのチョウはそうではない。そして、モンシロチョウにも個性があることを発見したというのです。
 もちろん、それに至るまでには、涙ぐましい調査・研究があったのでした。学者の世界も厳しいのです。
モンシロチョウの寿命は夏だと2週間、晩秋には、4週間近くになる。モンシロチョウは、東京あたりでは1年に8回も発生する。
 モンシロチョウの雌は、はね(翅)が紫外線を反射している(紫外線色をふくんでいる)ため、白くみえる。オスは、容易にメスを見分けることができる。
 ところが、白ではなくピンク色にみえるメスがいることが分かった。なぜか・・・。
 メスが日向にいるか日陰にいるかで色は変化する。日陰にふりそそぐ光は、明らかに紫外線が相対的にリッチ(豊富)である。メスが紫外線を反射しているのは、日本や中国などの東アジアのモンシロチョウだけで、ヨーロッパをはじめユーラシア大陸のメスは日本のメスほど紫外線を反射していない。
 モンシロチョウを採取すると、冷蔵庫に入れて保管する。冷温麻酔である。それでも5~6回しかもたない。ヨーロッパからモンシロチョウを日本に持ち帰って実験したのです。本当に大変です。
 紫外線の反射が非常に弱いメスが沖縄にいる。また、ヨーロッパのメスにとって同じ強さで紫外線を反射するメスもいる・・・。
モンシロチョウは、ヨーロッパで進化し、その後、マレーシア大陸の東方に公布を広げ、中央アジア、東アジアを経て日本にたどり着いたのである。モンシロチョウの東アジアへの分布拡大を支えたのは、人間の交易を利用したヒッチハイクである。このように、モンシロチョウは日本在来種ではなく、海外から移り住んできたものである。
 ところで、ヨーロッパのモンシロチョウのオスは行きあたりばったりでメスを探し求めている。
 『モンシロチョウの結婚ゲーム』を前に読んで魅惑させられたことを今も鮮明に覚えています。本書は、さらに深く掘り下げています。
春の野にせわしなく飛びかうモンシロチョウの生態に魅せられます。
(2012年9月刊。920円+税)

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