弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2013年3月 6日

建設業者

社会

著者  建設知識編集部 、 出版  エクスナレッジ

建設現場の実際について、大変勉強になる本でした。知らなかったことがたくさんあり、大いに目を開かされました。
 鉄骨鳶(トビ)は、一日の仕事を終えて現場から帰るときは、自分の足跡を一つ残らずホウキで掃いて消してから帰る。そこまでやらないと、本当にいい仕事をしたとは言えない。そこまで思いやれるようになって初めて、その人間は現場から信頼される職人になる。
たとえば、20年やっている職人と5年しかやっていない職人が一緒に仕事をするときは、必ず20年目の職人が5年目の職人のレベルに合わせてやる。そうすると、下の職人も自然に下の職人に思いやりを持つようになる。常日頃から、こういうコミュニケーションが大切。
現場の職人が互いに思いやりを持って仕事ができなくなったら、とたんに転落や打撲やら、事故が絶えなくなる。 思いやりをもったコミュニケーションこそが最高の安全対策になる。
 クレーンオペレーターは相手の言うとおりにしていたら事故につながるかもしれないと思えば、たとえケンカになってでも、その頼みは断る。そういう意味での決断力を常に意識しておかないといけない仕事だ。
職人の腕の良し悪しは、すべて段取りに出る。段取りの悪さは致命的だ。子どもに見せられる仕事はいいものだ。
2階以上の深さのある地下なら、たいていどこか下から地下水が染み出してくるもの。コンクリートを打ち継いだ目地やコールドジョイント(接着不良)の部分からジワーっと・・・。
 そこで、防水工の仕事は、まず水が染みている部分のコンクリートをはつって(削り取って)、その出所を突きとめる。次に水に反応して膨張する発泡ウレタンをその出所に注入する。あとは、その上に止水セメントを盛って塗布防水剤を塗れば完了である。
 優秀な職人というのは必ず2つの共通点をもっている。一つは段取りがいいこと。親方から言われたとおりにやる人はダメ。臨機応変、その場に応じた発想ができる人でないと現場はまかせられない。もう一つは、下地をきっちり作れること。うまい人は、仕事に対する欲がある。もっとよくしたい、もっと仕事について知りたいという探求心がある。
 現場には、自然にできあがった職人のランクみたいなものがある。大工がいて、左官がいて、それから鉄筋工、型枠工がいて、設備はずっと下。下の方から数えた方が早い。
 屋根まわりの板金なら、基本的には水が流れたいように流れさせてやることが大切。屋根でも庇でも、水が自然に流れない設計は、いつか必ず漏水を起こす。
 ウレタンを壁に均一に吹きつけるには、その日の気温、現場の階数(高さ)、延ばしたホースの長さ、吹きつけるスピードなど、ありとあらゆる要素をふまえて発泡期の状態を調整しないとできないこと。ウレタンって、非常にデリケートな材料なのである。
 階上解体。建物の上の階から解体機で解体しながら一階ずつ地上まで降りてくる工法のこと。鉄筋がしっかり入っていない建物は、解体機を床の上に安心して載せられない。いわゆる手抜き工事が発覚すると、この仕事は難しくなりそうだと覚悟する。頑丈つくってあれば、私たちも安心して壊すことができる。
 やはり、職人芸には学ぶところがたくさんありますね。
(2013年1月刊。1400円+税)

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