弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2013年2月19日

金曜、官邸前抗議

社会

著者  野間 易通 、 出版  河出書房新社

残念ながら、私はまだ金曜日夜の首相官邸前の抗議行動に参加したことはありません。霞ヶ関と日比谷公園には毎月行っているのですが・・・。
 そして、金曜夜の官邸前抗議行動をテレビも新聞もほとんど取りあげず、報道しないという真実に怒っています。芸能人の動きを一面トップで紹介する一方で、日本の将来を左右する原発反対の国民的大運動を無視するなんて、「社会の公器」が泣いてしまいますよね。
 この本は、金曜夜の官邸前抗議を主催する首都圏反原発連合の主要スタッフによる内側からの苦労話です。なるほど、ケガ人も逮捕者も出さずに、毎週、何万人もの人々の行動を「統制」するって、大変なんだろうなと思ったことでした。
 あまり参加人数が多すぎて危険な状態になったときには、警察の指揮官車のマイクとスピーカーを使った。もちろん、反原発メンバーが、です。とても考えられない事態です。
 それを警察権力との馴れあいすぎだと批判する人もいますが・・・。
この官邸前行動を報道するのは東京新聞と赤旗しんぶんだけ。なんということでしょうか・・・。テレビは、ずっとずっと無視するばかりでした。
 一番最初は300人しか集まらなかった(2012年3月29日)。いや、それだって、300人も集まったというべきだった。
 官邸前抗議は、公安条例にもとづく「デモ」ではない。デモ申請を出さず、歩道上で行われる。歩道には、必ず人が通れるスペースを残しておくのが「許可条件」。
 官邸に向けての抗議の声を上げる場であって、参加者に向けて語りかける集会の場ではない。話は1分以内。テーマは反原発のみ。
 参加者の半数は、ツイッターとフェイスブックを見て来る。しかし、団体から来る人も少なくない。そして、団体旗は、労組の旗をふくめて遠慮してもらう。これが軋轢も生んだ。個人参加を原則としているので、当然なのだが・・・。
 それでは、日の丸を掲げて参加するのは、どうなのか?
 いつまでも、日の丸をお上の象徴として忌避し続けるだけでは、自分たちの手で民主主義を実現するのは難しいのではないか。社会運動が日本の大衆の心情と乖離
しないように心がける必要があるのではないのか・・・。うむむ、なるほどと思わせる指摘ですね。
 警察はなぜ抗議運動を弾圧しないのか。子どもをふくんだ家族連れの参加者が多く、これを弾圧するのは得策ではないという判断が働いているのだろう。
 この人数じゃあ、機動隊は負ける。抑えきれない。
 ある刑事がホンネを語った。恐らく、そういうことだろう。
 見守り弁護団も40名をこえた。そして、ついに首都圏反原発連合の主要スタッフは野田首相と官邸内で会って、直接抗議の声を伝えた。私もこれは、とても大きな意義があるものだと思います。
 デモも世の中を動かすのです。従来の左翼的な大衆行動とは別の国民的なうねりを感じる新しい行動を見る思いがしました。これとは別に、労働組合が反原発運動は生存権に関わる課題として集会し、デモをし、さらにはストライキをしてもいい国民的課題だと思うのですが、いま残念ながら労働組合にその力がありませんね。
 ぜひ、一度この官邸前行動に参加したいものです。
(2012年12月刊。1700円+税)

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