弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2012年12月22日

七つの会議

社会

著者  池井戸 潤 、 出版  日本経済新聞出版社

私も実は一度だけ会社の就職面接を受けに行ったことがあります。大手製造メーカーでした。司法試験を受けている最中でしたが、少しヒマのできたとき、同級生に員数あわせとして誘われて興味本位についていったのでした。司法界にすすむつもりでしたので、会社の雰囲気を味わいに行っただけですが、こんな大きな会社に入ったら息が詰まってしまうだろうなという思いで、圧倒されてしまいました。
この本を読むと、中小企業に入ったら勤め先がいつまであるか不安を味わうことになるし、大企業にはいると組織の倫理が優先して汚れ仕事も頼まれたら断れなくなるし、とかくサラリーマンは気楽な稼業どころではないと身につまされます。
同じような企業の欠陥製品を扱った著者の『空飛ぶタイヤ』を思い出しながら、身に迫ってくる緊張感を味わいつつ車中で一心に読みふけりました。往復2時間の車中で一気に読みあげたときには、緊張感がようやくほぐれていく思いでした。
 『鉄の骨』も『下町ロケット』もよく出来ていましたし、『ルーズヴェルト・ゲーム』も読ませましたが、この本も大企業の社内のさまざまな人間模様をいくらか図式的ではあると思いつつも、よく描きわけているものだと驚嘆しました。
推理小説ではありませんが、ネタバラシするのは私の趣味ではありませんので、ストーリーの紹介はしません。
 ともかくノルマに追われる営業部のなかで、ノルマを達成していた課長がある日突然、左遷され、万年係長で働かない男がのうのうとしていて、それを上司が許しているという不可思議な職場から話はスタートします。
 夢は捨てろ、会社のために魂を売れ。
 客を大事にせん商売は滅びる。顧客を大切にしない行為、顧客を裏切る行為は自らの首を絞めることになる。顧客に無理な販売をせず誠実に顧客のために思って働くこと。
会社であっても、企業の大小を問わず、我が身大切を優先させたら、我が身もいつかは滅びるのですよね。天知る、地知る、我知る、です。それを肝に銘じるべきだと思い至りました。
(2012年11月刊。1500円+税)

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