弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2012年12月14日

デンマーク流「幸せの国」のつくりかた

ヨーロッパ

著者  浅本 隆行 、 出版  明石書店

国民の幸福度が世界一位のデンマークの実情を探った本です。日本はなんと90位でしかありません。たしかに、日本ではデタラメな政治家たちと自分のことしか考えない財界のせいで、多くの国民は泣かされていますよね。
デンマークには国王(今は女王)がいる。王は国の象徴にすぎない。王女は町に買い物に出かける。同じ象徴でも、日本の天皇は、決してそんなことはしませんね。
選挙権も被選挙権も18歳から。現に高校生(19歳)の市会議員がいる。投票日は平日。それでも投票率は常に85%前後。日本が輸入している豚肉は、アメリカ、カナダの次はデンマーク。日本のインスリン(糖尿病の治療薬)の8割はデンマークの製薬会社「ノボノルディスク」製。原子力発電所はなく、風力発電に重点を置いている。デンマークは自給率300%の農業大国である。
 デンマークの公務員は87万人。公務人が働く者の3分の1を占めている。介護サービスの従事者は、ほとんど公務員。税金として吸い上げられたお金は、公務員の給料として大部分が使われ、かなりの割合で内部で循環している。
 デンマークの幸福度一位は、医療費が無料、高い教育水準、国民一人あたりのGDPも世界高水準による。高校そして大学まで教育費は無料。それどころか、大学生には返還無用の奨学金が月8万5千円もらえる。しかも6年間。そのうえ、月4万円余りの学生ローンも借りられる。
 労働組合への加入率は80%をこえる。組合に入っていないような「ややこしい者」は経営者も好まない。
仕事を終わったあとの長い余暇時間の使い方に悩むという答えが多い。
 なんということでしょう。日本では考えられもしない答えですよね・・・。
失業手当は、3年間のうち2年間はもらえる。
子どもにとって、学校は楽しいものというのは当たり前のこと。通信簿はない。高校受験もない。だから学習塾もない。デンマークは物的資源に恵まれない国として、人的資源の開発に力を入れている。
もちろん、デンマークもいろんな問題をかかえています。たとえば、デンマークの離婚率は日本の倍以上。ところが、離婚しても、慰謝料や子どもの養育費を父親が支払うことはまずない。子ども手当をもらい、所得が少なければ、その分だけ控除も受けられる。離婚が金銭的な支障を伴わないため、離婚歴2、3回はザラということになる。
 大いに学ぶべき国だと思いました。
 今日は私の誕生日です。赤穂浪士の討ち入りの日と同じです。いつまでも気は若いのですが、頭のほうはすっかり白くなってきました。それにしても、国防軍にするとか、日本も核武装せよとか、キナ臭い話が次々に出て、それをマスコミが無批判にたれ流す現実に寒気を覚えるこのころです。軍隊で平和を守れるというのは、イラクやアフガニスタンを見たら幻想だというのは明らかだと思うのですが・・・。
(2012年10月刊。1600円+税)

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