弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2012年8月 4日

結いの島のフリムン

司法

著者   春日 しん 、 出版   講談社

 保護司、三浦一広物語というサブタイトルがついた本です。非行少年・少女をあたたかく見守り、更生につとめている保護司の活動を紹介しています。南の島の奄美大島では、人々がのんびりのどかに暮らしていると思っていましたが、現実は大違いのようです。
 かつて、奄美大島の産業界で隆盛を誇った大島紬(つむぎ)も、現代人の着物離れから著しく衰退し、特産の黒砂糖の産業も思わしくない。島を訪れる人の数が減ると、島で働く人の仕事が減り、仕事がなくなると家庭のなかに不和が広がって夫婦が別れ、子どもとひとり親の母子、父子の家庭が増えた。奄美では、ひとり親家庭が全体の4割をこえている。
奄美大島は、本州など四島を除くと佐渡島に次いで面積5位の大きさをもち、人口7万人の美しい島だ。
保護司の三浦一広は、奄美市役所福祉政策課・少年支援係に勤務している。NPO法人奄美青少年支援センター「ゆずり葉の郷」の中心人物でもあり。また、奄美合気道拳法連盟の統帥範代である。その教育方針は、許し、認め、ほめ、励まし、感謝する。すごいですね。私など、なかなかできませんね。励まし、感謝するというのは年齢(とし)相応にできるようになりました。でも、許し、認め、ほめというところがまだまだです。他人(ひと)のあらがすぐ目につき、それを批判(非難)し、けちをつけたくなります。
 大きな声による説教の効果は3ヵ月しか続かなかった。信頼してほめた言葉は、説得しなくても心の底から子どもを変えた。なーるほど、そうなんでしょうね。やっぱり、誰だって、自分を認めてくれる人になら心を開きますよね。
 非行少年たちの心を変え、親も感謝し、本人も喜ぶ循環型の治安維持活動。これが、2004年、日本初の試みとして奄美に発足した少年警護隊だ。その成果として、2年間で、奄美の犯罪件数は675件から313件へと半減した。少年非行も96件から32件へと、3分の1に激減した。
三浦一広は1年365日、1日24時間、問題をかかえるこどもとその家族のために、夜眠る間もケータイを離せず、2時間過ぎに受信をチェックする。必要とあれば、夜中の何時でも、現場にとびだしていく。ええーっ、こんなことって常人にはできませんよね。体は大丈夫でしょうか、心配です。
奄美大島には、消費者相談で全国的に有名な禧久孝一氏もおられます。狭い島だと思いますが、二人も全国的知名度をもつ地方公務員がいるなんて、なんと幸せな島でしょうか。
 今後とも、健康にだけは留意していただき、ご活躍を祈念します。
(2012年3月刊。2800円+税)

  • URL

カテゴリー

Backnumber

最近のエントリー