弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2012年8月 2日

第一次世界大戦(下)

ヨーロッパ

著者   ジャン・ジャック・ベッケール、 出版    岩波新書 

 今ではフランスとドイツが戦争するなんてとても考えられません。でも、わずか100年前は、両国民はお互いに敵とみて殺せ、殺せと叫んでいたのですよね。不思議な気がします。
 第一次大戦の根本的な特徴は、それが兵器の戦争になったこと。大砲が主役となった。フランスの戦死者の7%が砲弾によるものだった。フランス軍には、360万の負傷と280万人の負傷者が記録されている。これは、かなりの負傷者が2度以上、負傷していることを意味する。そして、フランスの負傷者の14%は顔面を負傷している。
毒ガスをつかいはじめたのは、1915年4月、ドイツ軍だった。しかし、多くのドイツ軍上級将校は、むしろ、それに抵抗しており、すすんで使用しようとしたのではない。
 1918年におけるドイツ軍の準備砲撃で使用された砲弾の4分の3がガス弾だった。フランス軍が始めてガス砲弾を使用したのは1915年9月からで、ドイツ軍が使ってわずか5ヵ月後だった。
 ドイツは大砲の砲弾に4万8000トンの化学物質を使用したのに対して、フランスは半分の2万3000トンだった。毒ガス被害者の数は限りなく大きかった。フランスの死傷者は13万人、ドイツは10万7000人だった。
 フランス軍とドイツ軍は塹壕で相対峙した。ときにわずか数メートル、一般に数百メートル離れていた。フランスの塹壕は完成度がもっとも低かった。最低の衛生条件。気候への隷属。冬の寒さ、季節の雨。泥は強迫観念となった。
 1916年のヴェルダンの戦闘は、フランスとドイツの間の恐るべき、空前絶後の殺戮の象徴になった。ヴェルダンでのドイツ軍の準備砲撃は「肉ひき器」と呼ばれたが、その砲火の雨にもかかわらず、敵を壊滅させるのに成功しなかった。
 1916年2月から12月までも続いたヴェルダンの戦闘において、フランス軍は戦死者16万人をふくむ40万人の兵士が犠牲となった。ドイツ軍は戦死者14万人をふくむ33万人が犠牲となった。全体として、1916年に130万人の兵士が死傷した。100万の戦死。
ドイツ軍から、1917年と1918年に10万人の脱走兵があった。これはドイツ兵全体の1320万人に比べると、驚くほど少ない。ドイツの軍事裁判官は48件しか死刑宣告しなかった。
 フランス軍では、反乱した兵士に対する554人の死刑判決のうち、執行されたのは49人のみ。反乱者の大部分は戦争に対して抗議したのではなく、しばしば無為に戦死させられるやり方に対して抗議していた。
 1918年、終戦による講和会議の展開と条約の条文はドイツ軍に憤慨を引き起こした。フランス人は喜んでよさそうだが、実際には違っていた。フランス人の態度は複雑だった。フランスの国会で条約は1919年10月、372対53票で批准された。反対票のうち49票は社会党だった。
 戦争が終わったとき、フランスとフランス社会は間違いなく貧しくなっていた。貧窮の主要な犠牲者は、中産階級だった。
フランスは戦勝国でありながら、勝利を祝うことはまれだった。
ドイツは、戦争で若者の相当な部分を犠牲にした。200万人の死者、400万人の負傷者である。戦争はドイツ領ほとんど及ばなかったため、日常生活から遠く、切り離されたものだった。よく理解されていないままの戦争だったから、勝者が求めた賠償金の金額に対するドイツ人の抗議は激しかった。戦後、700万の兵士がドイツへ復員した。ドイツでは、ワイマール共和国が存在した全期間を通じて不当な敗北の心の責任者という、左翼に対する非難は人々の心につきまとっていた。
 1919年1月にベルリンで起きたスパルタクス国の反乱の鎮圧は、この増悪にみちた暴力を反映している。社会民主党政権と共産党との関係は裂け目が常に刻印されていた。
 1933年のヒトラーの政権得票まで、左翼政党のあいだに討たれた裂け目を乗りこえることはできなかった。ワイマール共和国が受けた襲撃に対して共同戦争を作ることはできなった。そして、労働者が離れていった。
 なぜ、ヒトラーがドイツで選挙によって政権を握ったのか、少し分かったように思いました。
(2012年3月刊。3200円+税)
 アメリカの映画館のなかでバットマン映画の上映中に銃を乱射する男がいて、何人もの人が亡くなりました。
 これで銃規制が強まるかと思うと、かえって銃が一般市民に飛ぶように売れているとのことです。その発想は、映画館のなかで銃をぶっ放す男がいたら、そいつをすぐにうち殺せばいいんだというものです。でも、映画館内で撃ちあいになればなれば、さrに被害者は拡大するのは必至ですよね。
 アメリカって、つくづく野蛮な国だと思いました。

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