弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2012年7月 3日

原発震災

社会

著者  石橋 克彦  、 出版   七つ森書館

 昨年12月16日に野田首相が福島第一原発について「冷温停止状態になった」として「事故収束宣言」をしました。
 これで、マスコミの流れがまったく沈静化してしまいました。いまでは、メルトダウンの脅威は過ぎ去ったかのような扱いになっています。果たして、そうでしょうか?
 著者は、まったく早計だと断言しています。私もそう思います。炉心が溶融してメルトダウンしたまま、応急的な循還注水でしのいでいるのにすぎません。福島第一原発が、いつまた重大なトラブルや大規模の放射能放出を起こさないか、今もって予断を許さないのです。
とりわけ四号炉は心配ですよね。地震で建屋が倒壊して使用済み核燃料が露出してしまったら、東京をふくむ東日本全体が深刻な放射能汚染に見舞われてしまいます。一刻も早く手を打ってほしいと思います。細野原発相が4号炉の現地視察をしましたが、コンクリートの支えだけで、本当に大丈夫なのでしょうか?
そして、著者は「除染」の効果についても次のように疑問を投げかけています。
 除染事業が政府と自治体によって大々的に進められているが、基本的には、線量の高いところ、再汚染によって効果が疑わしいところは、避難したほうがいい。原発は安全だと国民をだまし続け、今では放射能汚染は除染すれば大丈夫だと偽って、多くの国民の「生」をズタズタにしている。
政府と御用学者は、かつて、日本は米英なんかに絶対に負けないと国民を汚染し、敗色濃厚になったらバケツリレーやら竹槍戦術でも勝てると欺いていたときと何ら変わらない。「ただの発電所」であるべき原子力発電所という施設が、一旦人間の制御から外れると、いかに凶暴に人間を蹂躙するものであるか、白日のものにさらした。
 原発の危機は、一般に短い周期の揺れに弱い。そういう性質をもつ強い揺れが、想定した倍以上の130秒くらい、とくに激しい部分も想定の倍以上の60秒間、原発を襲った。長時間の強い揺れは、くり返し荷重として構造物に厳しく作用し、疲労破壊を引き起こした。
地震研究者として、日本のような地震列島における原発は、技術と経営の両面からみて、実用的などんな対策を施しても、誰一人として安全を保証することなどできないと考えている。
 福島第一原発事故の大きな教訓の一つは、「起こる可能性のあることは、すぐにも起こる」と思うべきだということ。そもそも、大津波は災害を想定しなければならない場所で原発を運転するなどとは、暴風雪が予想されている冬山にツアー登山するようなもので、正気の沙汰ではない。
 これって、けだし名言というべきではないでしょうか。
 日本中のどの原発も、想定外の大地震に襲われる可能性がある。その場合には、多くの機器・配管系が同時に損傷する恐れが強く、多重の安全装置がすべて故障する状況が考えられる。
 原発が地震で大事故を起こす恐れは30年以上も前から指摘されていた。著者は1997年に「原発震災」という概念を提唱した。それは、地震によって、原発の大事故と大量の放射能放出が生じて、通常の震災と放射能災害が複合・増幅しあう人類未体験の破局的災害である。
 日本が多くの原発を建設した1960年代から30年間は、幸か不幸か日本列島の地震活動静穏期であり、地震の洗礼を受けることなく、原発が増殖した。ところが、1995年の阪神・淡路大震災のころから全国的に大地震活動期に入った。大地震の発生を普遍的法則によって一律に予知するのは、当分のあいだ不可能である。
 高名な地震学者による警世の書です。ぜひ手に取ってお読みください。
(2012年2月刊。2800円+税)

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