弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2012年3月 9日

いま、先生は

社会

著者   朝日新聞教育チーム 、 出版   岩波書店

 教師と学校の今おかれている現実を直視してこそ、日本の子どもの将来を語ることができるように思われます。手にとってずしりと重たさを感じるほど、重い内容の詰まった本でした。
 教師の忙しさの質が変わった。忙しさには、やりがいのある忙しさと、消耗する忙しさという2種類がある。子どもを指導する忙しさはやりがいがあるが、説明責任を果たすための書類づくりや、ダラダラした職員会議に追われる忙しさは消耗する。そんな、疲れる忙しさが増えている。
学校や教師に無条件で権威が与えられていた「黄金時代」は完全に幕を閉じた。親が家庭や地域、企業で直面している苦しさが、子どもを通じて、まるで玉突きのように学校に押し寄せている。
 教師層の入れ替わりが激しい。30代の教員が少ないため、若手教員の相談相手となるべき先輩が学校にほとんどいない。この10年間で3分の1が入れ換わる。今や日本の教員の大転換期を迎えている。
 昔は、校長、教頭のほかは一般の教員だった。今では、統括校長、校長、副校長、主幹、主任教諭、教諭という序列ができている。
 教員評価の時期になると、評価される側は不安になるし、他の人がどう評価されているかも気になる。
 定年前に辞める教員が全国で毎年1万2000人をこえる。2005年度から2009年の5年間で全国合計で6万7000人にもなった。
 教員が定年前に早期退職する要因は二つ。一つは、子どもや保護者、同僚との関係に悩み、書類づくりの仕事も多いため、労働時間が長くなり、その密度が高くなった。もう一つは、教員が改革の標的にされ、成果主義の教員評価の徹底など、教師を傷つける政策が進行していること。
 学校では、細かな授業時間数の報告、学級経営案など、さまざまな書類づくりという、求められる事務作業が年々ふえている。そのため、教師は、子どもと接するより、パソコンと接する時間のほうが多くなっていく。
教師の働き過ぎに歯止めがかからない。中学校の教師が学校にいる時間は、1980年に10時間近かったが、1991年は10時間40分、1997年には11時間に近くなった。2007年には、11時間45分だ。27年間のうちに2時間も在校時間が長くなった。そして、教師の睡眠時間は、7時間8分から5時間57分と、1時間以上も減った。
 小学校の教師の労働時間は教頭が12時間近く、校長や教諭は10時間。中学校では、教頭が12時間弱で、校長は10時間ほど。日本の小学校の教員は、OECD平均より年間236時間も多い。1899時間働いている。
 日本の教師は、繁忙感が大きく、仕事に対する自信喪失感が強い。
 教師の自死そして精神病疾患が増えている。とりわけ学校の保健室を頼るのは、もはや生徒だけではない。
希望降任制度の利用者が増えている。東京、神奈川県で目立つ。主幹教諭から、副校長から、そして校長から降任していく。
教員の仕事は独特だ。いくら献身的につとめようと、売り上げや利益の増加といった、目に見える「対価」がない。だから、がんばっている教員には、感謝や喜び、ときにはねぎらいの言葉をかけてやるべきだ。
 公立小・中学校の常勤・非常勤あわせた非正規教員は10万9000人(2010年)で、全体の15.6%(7人に1人)を占めている。背景にあるのは、教員を採用する都道府県や政令指定都市の多くが直面する財政難だ。
 我が子が本当に可愛いのなら、子どもを学校でずっと教え、接触している教師をもっと大切にすべきだと思います。なかには「暴力教師」であったり、「無気力教師」もいたりするかもしれませんが、それは安かろう、悪かろう政策の結果ではありませんか。もっと高給優遇し、休日もたっぷりあるようにすれば、優秀な人材が教育界にあつまり、日本の教育が劇的に改善されると思います。学力テストの成績で教師と生徒をしばりつけるやり方がうまくいくはずはありません。
学校と教師の現実の状況を知ることができました。ご一読をおすすめします。
(2011年12月刊。1700円+税)

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