弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2012年1月 9日

アメリカのスパイ・CIAの犯罪

社会

著者  山田 善二郎 、 出版  学習の友社  

著者は日本国民救援会の元会長です。24歳のころ、CIAに雇われて働き、拉致・監禁されていた鹿地亘(かじわたる)を救出することに一役買ったのでした。
 拉致したのはGHQの秘密諜報機関であるキャノン機関とCIA。海岸を散歩中の鹿地を拉致して都内に監禁していた。これって、まったく北朝鮮がやったことと同じですね。
 著者はキャノン機関でコックとして働いていた。鹿地の状況を同情して救出に動いたのであって、そこには思想的な背景はなかった。左派社会党の猪俣浩三代議士が国会で追及したおかげで、鹿地は無事に解放された。
 キャノン機関の本拠地は東京・湯島の岩崎邸にあった。私が40年ほど前に通った司法研究所も、その一角にありました。
キャノン機関は朝鮮戦争で捕虜となった中国人をスパイとして教育し、中国本土へ送り込む仕事もしていた。その数は200人をこえる。しかし、これはことごとく失敗したとみられている。
 キャノン機関は日本の警察幹部を招いてのパーティーをよく開いていた。
著者がCIAやキャノン機関の力を恐れつつ、鹿地救出に奔走する実情が生々しく紹介されています。まさに手に汗にぎる場面の連続でした。
 アメリカも、日本の国会で追及された以上は、鹿地を手放さざるをえなかった。
 それにしても不甲斐ないのは日本の警察です。明らかに日本の主権を侵害しているのに、アメリカに対して抗議の声をあげようとはしませんでした。昔も今も、日本の当局がアメリカべったりなのは変わりませんね。残念です。
 60年も前の事件ですけれど、今も同じようなことはきっと起きているのでしょうね。

(2011年6月刊。1333円+税)

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