弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2011年12月20日

ルポ・下北核半島

社会

著者   鎌田 慧・斉藤 光政 、 出版   岩波新書

 青森県は、日本でもっとも危険な県である。
こんな文章で始まります。ええーっ、そうなんですか・・・。いったい、何が青森県にあるのでしょうか?
 アメリカ軍の三沢基地は、米ソ冷戦時代には「核攻撃基地」だった。今なお、アメリカによる世界軍事支配の世界戦略を支えている。
 この三沢基地に隣接して天ヶ森射撃場がある。戦闘爆撃機が模擬爆弾を投下する直下に、六ヶ所村がある。猛毒プルトニウムや使用済み核燃料を収容したプールや再処理工場がそこにある。さらに、航空・陸上・会状の各自衛隊の基地が配置されている。
 青森県は軍事と各産業の集中地帯なのである。
 猛毒のプルトニウムを生産する「再処理工場」は、一基の原発が1年間に搬出する放射能をたった一日で環境中に排出する。六ヶ所村の核燃料再処理工場は、事故続きで2008年末から停止したまま。世界でもっとも危険で、技術も安定していない。1993年に着工されて以来、トラブルが続いて、既に18回も施工延期を発表している。
 六ヶ所村の核基地化は、政府と電力会社が新全総当初から方針化していた。
 再処理工場だけで2兆円の工事、5施設の全部をあわせると3兆円近い工事費となる。
 原発を誘致したら、出稼ぎに行く必要がなくなるという宣伝がなされた。たしかに仕事は増えたが、技術的な資格がなければ日雇い仕事だけだった。人口の推移を見ると、1960年に東通村は1万2500人だったのが、2009年には7500人になった。第一原発が稼働しはじめた2005年の人口は8000人だったから、原発が動き出しても、人口は下げ止まりとはなっていない。
 1基で3000億円とか4000億円という原発の建設工事は、「地域開発の起爆剤」「過疎地経済のカンフル剤」と言われたことがあった。しかし、7ヵ年限定の交付金が切れると、禁断症状が出て、もっと新たな原発を、と要求するようになる。
 使用済み核燃料は「キャスク」と呼ばれる、高さ5.4m、直径2.5mの金属製、重さ120トンのドラム感情の円筒に、10トン分が収納され、50年間、保有される。保有は地中にではなく、地上の平屋建て倉庫に縦に並べられる。26ヘクタールの土地に幅60m、奥行き130mの建物がつくられ、その床に3000トンの使用済み核燃料が貯蔵される。最終的な貯蔵量は5000トン。建屋の建設費は1000億円。そのうち7~8割は金属キャブクの費用。50年間寝かせておいて、それから再処理工場へ搬出される。
 福島第一原発の4号炉に使用済み核燃料がありましたよね。そして、この核燃料がどうなっているのかは、事故から7ヵ月たった今でもまったく分からないというのです。
 放射能が30年とか50年で消え去るはずはありません。「地域振興」の名のもとで絶対に原発を建設してはいけません。
 危険を直視すべきです。わずか100年程度しか稼働しない非効率な工場が排出する、何十万年後の世代にまで放射能の悪影響を及ぼす危険があるものを扱うなんて、子孫に対して申し訳ないですよね。ノーモア原発をご一緒に叫びましょう。
(2011年10月刊。1900円+税)

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