弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2011年12月14日

恥さらし

司法(警察)

著者  稲葉 圭昭      、 出版  講談社   

 北海道警の有名な「悪徳刑事」の告白です。懲役9年の実刑に服して出所してきて、自分が何をしたのか、北海道警がどう関わったのかを実名で明らかにしています。恐るべき警察告発本です。
 佐々木譲の警察小説の多くは、この本の著者の挙動をネタ元にしています。しかし、本人が書いていますので、小説とはまた一味ちがった迫真力があります。それにしても、オビに大書されていますが、覚せい剤130キロ、大麻2トン、拳銃100丁が北海道警の関与のもとで日本に密輸されて、その所在が分からないままとなっているなんて、とても信じられません。日本の警察というのは想像以上に腐敗しているようです。そう言えば、警察の裏金問題も、いつのまにかウヤムヤになってしまいましたね・・・・。著者は、2003年4月21日、懲役9年、罰金160万円に処するという判決を受けました。
 26年間にわたる人生の警察官人生のなかで、数多くの違法行為に手を染めてきた。捜索差押許可状(ガサ状)なく強制捜査、犯意誘発型のおとり捜査、所有者の分からないクビなし拳銃の押収、覚せい剤と大麻の密輸、密売、そして使用。組織ぐるみで行われる違法捜査によって感覚は完全に麻痺し、正と邪の区別がつかなくなってしまっていた。
 著者がスパイ(エス)として使っていた人物は拘置所内で自殺し、元上司も公園内で首吊り自殺した。
ヤクザのシノギを警察官が斡旋する。しかも、警察庁キャリアOBが関与して行われていた。そのとき、1000万円もの現金が動いた。
 ガサ状を取るための調書は刑事が適当に作文し、ほかの警察官に調書のサインと指印をしてもらう。しかし、この虚偽内容の公文書作成が問題になることはない。公判に出てくることはないからだ。
所持者不明の拳銃。いわゆるクビなし拳銃の押収は、銃器対策が本格化した平成5年以降、警察庁のお墨つきを得た。それまでは所有者不明のクビなし拳銃を押収するのは恥ずべき捜査だったが、むしろ奨励されるようになった。クビなし拳銃の押収は、拳銃の所有者を逮捕しないために手軽に見える反面、捜査員が暴力団に「借り」を作ってしまう危険がある。
 しかし、自首減免規定が銃刀法改正でもうけられたあと、著者はこの規定をよりどころとして、暴力団関係者を自首させた。
 拳銃密輸入を検挙するため著者は東京で潜入捜査し、危うく発覚してしまいそうになりました。柔道による耳の形を取引相手の暴力団が気がついて、怪しんだためです。そのときは、とっさに相棒がレスリングをやっていたからだとごまかしてくれて、窮地を抜け出せました。
著者は覚せい剤の密売に手を染め、アジトとしたマンションには、数百万円から数千万円の札束がぎっしりという状態にまでなった。そして、拳銃の保管庫にしていた車庫には、多いときで100丁近い拳銃を保管していた。
 これって、信じられない金額と数字ですよね。そして、覚せい剤中毒患者になっていくなかで、著者のつかっていたエス(スパイ)が逮捕されたとき、裁判官にぶっつけ告白したのでした。
 ここに書かれている警察の体質が改まったと本当に言えるのでしょうか・・・・。心配でなりません。事実は小説より奇なりとは、よく言ったものです。下手な警察小説には見られない真相が語られて、ド迫力があります。ぜひ、ご一読ください。
(2011年6月刊。760円+税)

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