弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2011年11月28日

自分を育てる読書のために

社会

著者  脇 明子・小幡 章子 、 出版   岩波書店

 とてもいい本です。子どものころから本が大好き人間で、今や完全な活字中毒症の私にとって、読書ってこんなに大切なんだよと分かりやすく語り明かしてくれる、このような本は涙があふれ出てくるくらいに嬉しい本なのです。
 中学校の図書室で司書として子どもたちに、本を読む楽しさを伝える実践に明け暮れていた日々が語られています。子どもたちの反応が面白いのです。司書として著者は、あの手この手を駆使します。それによって一度、いったん目を開けた子どもたちは大作に挑戦していきます。私も上下2巻とか、5巻本というのは怖くありません。600頁もある本だって平気です。
 子どもが本を読んだら、どんないいことがあるか、と問いかける。その答えは・・・。
第一に、想像力が伸びる。第二に、記憶力だって伸びる。そして、第三に、考えるヒントがもらえる。
子どもたちは、大人から本を読みなさいといわれ続けているけれど、なぜ読まなくてはならないのかについて、納得できる説明をもらっていないことが多い。
 読書から得られるアドバイスのありがたさは、それを無視して失敗しても「だから言ったでしょ」とは決して言われないこと。どの物語のどのアドバイスに従おうと従うまいと、本は知らん顔で、何も言いはしない。
 そうなんですよね。でも、ともかく、本は想像力を豊かにしてくれます。映画はビジュアルにしてくれますが、本の想像力にはかないません。なにしろ、頭の中は縦横無尽。なんの制約もないのですから・・・。
 子どもたちが本を読まなくなった。そして、せいぜいケータイ小説に夢中になっている。
 しかし、本来なら、小学生・高校生から大学生にかけての時期こそが本を読むのを大切にしてほしい時期なのだ。思春期にあたるこの時期は、嵐の海を渡るように危なっかしいものであるにもかかわらず、大人からの直接的な手助けが受けにくくなるのが普通だから。
 私は小学生のころは偉人伝を読みふけっていました。リンカーン伝とか野口英世伝です。中学校のときも図書室にはよく行って山岡壮八の「徳川家康」を読了したことを今でも覚えています。高校生になると、図書室に入り浸りで、古典文学体系で日本の古典を原典で読んでいました。もちろん注釈付きの本ですが・・・。世界文学全集にも手を出して、世界を広げました。ヘルマン・ヘッセの「車輪の下」とか、読みましたよ。
今の子どもたちは、お互いに顔色をうかがって言いたいことも言えずにいる。そして、他人(ひと)の気持ちを推し量るのが苦手な子が多い。だから、さんざん気をつかいあう割に、トラブルが絶えない。子どもたちの世界も大変のようです。
司書は一人一人の子どもの特性と好みをつかんだうえで、その子にあった本をすすめる。そのためには前提として本をよく読んでおかなくてはいけない。この本のなかで紹介されている本で、私が最近読んだものに、『トムは真夜中の庭で』というのがありました。不思議な小説で、結末を知りたくて最後まで読みました。『冒険者たち』も近いうちに再読しようと思っている本です。
 司法試験の勉強をしているときには、『天使で大地はいっぱいだ』という本を牛久保秀樹弁護士にすすめられて読みました。とげとげしくなった心がほんわか温まった記憶があります。
いい本は、本当にいいものですよね。こんな司書のいる中学校の生徒たちは幸せです。豊かな人生が楽しめるはずですからね。
(2011年6月刊。1700円+税)

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