弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2011年11月25日

橋下主義を許すな

社会

著者  内田樹・香山リカほか  、 出版 ビジネス社   

 「今の日本の政治で一番重要なのは独裁」
 「政治家を志すっちゅうのは、権力欲、名誉欲の最高峰だよ」
 「ウソをつけない奴は政治家と弁護士にはなれないよ。ウソつきは政治家と弁護士の始まりなの」
 「生まれたての赤ちゃんから大人になるまで、教育は強制そのもの」
 「日本再生の切り札じゃないか。カジノ、これしかない」
 「小さな頃からギャンブルをしっかり積み重ねて、全国民を勝負師にする」
 これらすべてが橋下徹語録です。恐ろしいことに、こんな馬鹿げた言い分を20代、30代の若者が喝采しているのです。ウソつきは弁護士の始まりだなんて、とんでもないことです。自分はウソばっかりついて弁護士をやっていたのでしょうが、自分の体験を一般化してほしくはありません。
若者にうけている背景には、閉塞した社会を生きる市民のやり場のない不平不満のたまりにたまった蓄積がある。
 まことにそのとおりなんだと思います。
今という時代は、政治変革のあとの幻滅にみんなが浸っている状況である。所詮、民主政治とは、幻滅と希望の繰り返しである。
 あなたのウップンを晴らしますよというウップン晴らしの専門家に任せてしまって自分たちで考えることをしないと、もっと大きな問題を作りだすことになる。 
橋下は議論を否定している。ハシズムは政治の否定である。橋下は、人間をバラバラに分断して、個人個人で責任をとれ、個人でがんばれという渦の中に放り込もうとしている。
 橋下徹のやり方は、軍隊的官僚主義と能天気きわまりない単純な市場競争主義の混合物である。新自由主義でありながら、軍隊式である。
極端が極論のまま暴走して、そこに人々がスリルと魅力を感じている。どちらに行くのか分からない独裁をあえて作り出して、面白がっているのが橋下の政治である。
橋下は活字での発言はしない。それで、人々を瞬間芸の世界に巻き込む。その場その場で、一貫性がない、橋下は手を変え、品を変え、いろいろ皆の目をそらしながら、見世物をやってきた。
 子どもは商品じゃないし、人材でもない、彼らは次代の我々の共同体のメンバーなのである。
橋下の提唱する教育基本条例は根本的に間違っていますよね。ところが、それに手を叩く若者が少なくないところに今日の社会の異常さがあります。橋下が大声で叫べば皆が目をそむける。そんなあたりまえの大阪であってほしいと心から願っています。いま
貴重な一冊です。ぜひ、とりわけ大阪の人々に読んでほしいと思います。


(2011年11月刊。800円+税)

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