弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2011年11月12日

刀伊入寇

日本史(平安時代)

著者   葉室 麟 、 出版   実業之日本社

 ときは平安朝。平和な日本のなかで貴族たちは安穏に日々を過ごしていると思いきや、朝廷内では高級貴族たちが激しい暗闇をくり広げていて、しかも中国・朝鮮という外国の争乱までも日本に影響を及ぼしていたのです。
 この世をば 我が世とぞ思う
望月の欠けたることもなしと思えば・・・
藤原道長もこのような得意絶頂としてではなく、その地位が不安定な高級貴族の一人として登場します。そしてまた、『源氏物語』を書いた紫式部、さらには『枕草子』の清少納言も登場し、その不安定な地位を前提として語るのです。
 平安時代に生きる人たちも決して平穏無事に、のんべんだらりと泉水のある庭園でゆったり和歌づくりに専念していたわけではない。そのことを自覚させられる本になっています。
 夜郎自大(やろうじだい)の国。夜郎とは、中国(漢)の時代に西南の夷にあった国のひとつ。漢が大国であることを知らず、自らを強大と思って漢の使者に接した。うむむ、自戒すべき言葉ですね。
 紫式部は清少納言が好きではなかった。清少納言は漢籍の知識をしたり顔でひけらかすが、たいしたことはない。猿楽言(さるがるごと)とは、冗談のこと。
さがな者とは、荒くれ者、性悪者だという意味である。
 刀伊国の50艘の船が壱岐島に来襲し、家を焼いたほか島民を殺し、捕らえて連行していった。これを刀伊(とい)入寇という。その警戒にあたる責任者として、京都から藤原隆家が太宰府に派遣された。藤原家の率いる貴族たちがまるで武士であるかのように来襲してきた刀伊と戦うなんて、ええっ、本当なの・・・と叫びたくなります。
 平安時代を中国・朝鮮からの外圧とたたかっていたとみる視点が新鮮でした。そして、信長の不安に満ちた生の声が聞こえてくるストーリーも奇想天外でした。
(2011年6月刊。1600円+税)

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