弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2011年10月29日

密売人

司法(警察)

著者  佐々木 譲  、 出版  角川春樹事務所   

 うまいですねぇ・・・・。いつ読んでも、この著者の警察小説はほれぼれしてしまいます。情景描写といい、ストーリーといい、なるほど、そうか、そうだろうなと思わずうなずき、ぐいぐいと作中の部隊に引きずり込まれてしまいます。
 本書のタイトルからすると、覚せい剤とか拳銃の密売人を扱っているかと思わせますが、違います。では、何を売ったのか・・・・?
暴対法ができて、そのあと6、7年前が、警察庁が全国一の暴力団の徹底し壊滅を指示して以来、やつらは本当に食えなくなっている。私文書虚偽記載で組長逮捕だ。型式犯だ。子分が銃刀法違反で、何も知らない組長が6年の実兄だ。以前なら考えられないような微罪で逮捕、刑務所送り。昔ながらのしのぎも成立しなくなっている。上の連中は逮捕覚悟で俠客の看板を掲げているが、日々、実入りは少なくなっている。義理かけもままならなくなっているが、いまの組長クラスだ。
こんなセリフがありますが、本当でしょうか。
 福岡県内は暴力団の密度が日本有数に高いので有名です。中州も、北九州も、そして、筑豊も筑後も、至るところで鉄砲の弾が飛びかっています。それは、暴力団同士というのもありますが、主としてゼネコンなど土木・建築会社がターゲットになっています。公共工事の3%ルールをこれまでどおり守れというヤミ社会からの催告かつ警告の弾丸です。
 いま九州新幹線の乗車率の低さが問題となっています。事前の予想乗車率の3割しかない駅があります。田舎の田んぼの真ん中に忽然として誕生した新幹線駅は、まさしく政治家と暴力団が私たちの血税を喰いものにしている象徴です。
 そんなことを考えたとき、暴力団が不景気だというのも、にわかに信じる気にはなません。先日の久留米の組長宅襲撃事件では、ついにマシンガン(機関銃)まで登場してきました。恐ろしい世の中です。
 この本では、警察の上層部と暴力団の癒着も暴かれています。お互い、持ちつ持たれつの関係があるというのです。これまた許せないことです。そう言えば、この間の一連の発砲事件で、犯人が警察に逮捕されたなんて、聞いたことありませんよね。どうなっているのでしょうか・・・・。もっと、しっかりしてくださいな、警察官の皆さん。

(2011年8月刊。1600円+税)

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